この記事のポイント
- 企業版ふるさと納税の「中間事業者」に制度上の定義や登録制度は存在しない。内閣府の制度説明資料にあるのは、地方公共団体と企業を結ぶ公的なマッチングの枠組み(マッチング会・マッチング・アドバイザー制度)であり、民間の仲介サービスはその外側で自発的に成立している。
- 民間の仲介サービスは、担う業務範囲で4つの型に整理できる。①掲載型(寄附募集事業の情報掲載)②マッチング型(企業と自治体の引き合わせ)③企画支援型(寄附活用事業の組成・設計の支援)④運営受託型(寄附受入後の事業運営そのものの受託)。1社が複数の型を兼ねることも多い。
- 比較の軸は知名度ではなく「費用の負担者」と「寄附活用事業との距離」である。④に近いほど、事業者が寄附活用事業の発注先になり得るため、入札・契約手続の透明性が論点になる。
- 内閣府の令和5年度実態調査(全1,462団体・5,258事業)では、寄附活用事業の発注先を公表(一部含む)していたのは2,033/4,193事業(49%)にとどまる。一方で寄附法人名の公表は4,807/5,258事業(91%)であり、「誰が寄附したか」に比べて「誰が受注したか」の透明性は低い。
- localgovs.net を運営する株式会社トクイテンも、自治体の寄附活用事業(農業分野)を受託する④型の事業者である。本記事は特定の事業者を推薦するものではなく、型の違いと確認すべき論点を整理するものである。
1. 「中間事業者」とは何か? 制度上の定義は存在しない
企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)について調べていると、「中間事業者」「ポータルサイト」「仲介事業者」といった呼び方に行き当たる。しかし、これらは制度上の用語ではない。個人版のふるさと納税と異なり、企業版ふるさと納税には、国が民間事業者を登録・認定する制度は存在せず、内閣府の制度説明資料にも「中間事業者」という区分は置かれていない。
制度の建て付けを確認しておく。企業版ふるさと納税は、地方公共団体が地域再生計画の認定を受け、その計画に位置づけられた寄附募集事業に対して企業が寄附を行い、寄附企業が税制優遇(地域再生法第13条の2の課税の特例)を受ける仕組みである。法律上の当事者は地方公共団体と寄附法人の二者であって、その間に事業者が入ることを前提とした規定はない。したがって民間の仲介サービスは、制度の外側で、情報の非対称性を埋めるサービスとして自発的に成立してきたものだ。
一方、国が公式に用意している「結びつけ」の仕組みはある。内閣府は制度説明資料で、ポータルサイトでの地域再生計画・寄附募集事業の公開に加え、企業と地方公共団体のマッチング会の開催を活用促進策として挙げている。さらに令和3年10月には「内閣府企業版ふるさと納税マッチング・アドバイザー」制度を創設し、令和5年10月以降に2名の有識者を追加で委嘱している。アドバイザーは内閣府主催の分科会「企業と地方公共団体とのマッチング会」の参加者に助言を行う。つまり「仲介」に相当する機能は、民間サービスを使わずとも公的な枠組みで一定程度まで到達できる。この前提を押さえた上で、民間サービスを使う理由と費用を検討するのが順序として正しい。
制度そのものの全体像は企業版ふるさと納税とは、寄附先の探し方は寄附先の選び方、申出から税申告までの流れは手続き完全ガイドで解説している。
2. 民間の仲介サービスは4つの型に分かれる
民間サービスを横並びで比較しようとすると、サービス名や掲載自治体数を並べることになりがちだが、それでは違いが見えない。担っている業務範囲で分けると、次の4つの型に整理できる。実際には1社が複数の型を兼ねており、「どの型の会社か」ではなく「この案件でどの型を担っているか」で見るほうが実態に合う。
| 型 | 担う業務 | 費用を負担するのは誰か | 寄附活用事業との距離 |
|---|---|---|---|
| ①掲載型 | 自治体の寄附募集事業を一覧化し、企業に向けて情報掲載する | 主に自治体(掲載料・成果報酬)。企業は無料のことが多い | 遠い(情報提供のみ) |
| ②マッチング型 | 企業の関心領域と自治体の事業を突き合わせ、面談・商談を設定する | 自治体・企業の双方のパターンがある | やや遠い(引き合わせまで) |
| ③企画支援型 | 自治体側の寄附活用事業の組成・計画書作成・寄附募集の設計を支援する | 主に自治体(委託料) | 近い(事業の設計に関与) |
| ④運営受託型 | 寄附を原資とする事業の運営そのものを受託・実施する | 自治体(事業費としての委託料) | 最も近い(事業の実施主体側) |
①掲載型は、個人版ふるさと納税のポータルサイトに近いモデルである。企業にとっては、認定された寄附募集事業を分野横断で探せる点に価値がある。ただし掲載は網羅的とは限らない。内閣府ポータルサイトには全国の地域再生計画と寄附募集事業が掲載されているため、民間サイトの掲載有無が制度上の適格性を意味するわけではない点には注意が要る。
②マッチング型は、企業の事業戦略やCSRテーマに沿って自治体を提案する。前節のとおり内閣府のマッチング会という公的な代替手段があるため、企業側が有償で使う場合は、公的枠組みとの違い(通年で動くか、非公開の相談に乗るか、社内説明資料まで作るか)を具体的に確認したい。
③企画支援型と④運営受託型は、企業ではなく自治体側に向けたサービスである。自治体の人員が限られる中で、寄附を集めるための事業設計や、集めた寄附で動かす事業の実行を外部に委ねる形だ。寄附する企業から見ると、この2つの型の事業者は「寄附先自治体の委託先」として現れる。
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3. 比較すべきは知名度ではなく「費用の負担者」と「発注の透明性」
サービスを比較する際、掲載自治体数や導入実績の多さが指標として示されることが多い。しかし企業の稟議で問われるのは別の点である。実務上、確認すべき軸は2つに絞られる。
1つ目は費用を誰が負担しているかである。企業が無料で使えるサービスであっても、費用がゼロなのではなく、自治体側が掲載料や成果報酬という形で負担している場合がある。寄附額に対して一定率の成果報酬が発生する設計であれば、寄附のうち地域に届く金額はその分減る。企業版ふるさと納税は、寄附額の最大約9割が税制優遇で軽減され、実質負担が約1割に抑えられる制度である。「実質負担の約10倍の資金を地域に届けられる」という説明を稟議書に書くのであれば、その資金のうちどれだけが事業費に充てられるのかは、寄附先自治体に確認しておくべき事項になる。税額控除の構造は控除上限 早見表で確認できる。
2つ目は寄附活用事業の発注先としての透明性である。③企画支援型・④運営受託型では、事業者が寄附活用事業の受注者になり得る。ここで効いてくるのが、寄附の代償として経済的な利益を受けることの禁止である。禁止の根拠は地域再生法施行規則第13条(平成17年内閣府令第53号)にあり(禁止行為の具体例は経済的利益の供与の禁止で解説している)、内閣府は令和7年度税制改正において、寄附法人・関係会社が再委託先となる場合の留意点をQ&Aに明記するとともに、地方公共団体が寄附活用事業の発注先を公表することを求めている。禁止される行為の具体像は禁止される経済的利益の供与とはで整理した。
この論点が実務上どの程度シビアかは、内閣府が令和7年度税制改正の参考資料として公表した実態調査の数値が示している。調査対象は令和5年度に寄附を受領した全1,462地方公共団体、当該寄附が充当された全5,258事業、寄附総額約470億円である。
| 調査項目 | 結果 | 母数 |
|---|---|---|
| 寄附活用事業の契約先等に寄附法人等が含まれていたケース | 30事業(0.7%) | 4,228事業(契約手続等がない1,030事業を除く) |
| 寄附法人名を公表(一部含む)していたケース | 4,807事業(91%) | 5,258事業 |
| 寄附活用事業の発注先を公表(一部含む)していたケース | 2,033事業(49%) | 4,193事業(契約手続等がない1,065事業を除く) |
| 歳出予算の議決後に寄附金を受領していたケース | 4,386事業(86%) | 5,118事業(物品による寄附140事業を除く) |
注目すべきは、「誰が寄附したか」の公表率が91%であるのに対し、「誰が受注したか」の公表率は49%にとどまるという非対称性である。発注先を公表していない事業が51%(2,160事業)存在する。寄附法人等が契約先に含まれていたケース自体は0.7%と小さく、制度全体として利益相反が常態化しているわけではない。しかし企業側が自力で検証しようとしても、半数の事業では発注先の情報が公開されていない。だからこそ、仲介サービスを介して寄附先を決める場合には、その事業者自身が当該事業の受注者になるのかを、事業者または自治体に直接確認する意味がある。
4. 自治体職員が掲載先を選ぶときの論点
ここまでは寄附する企業の視点だったが、「中間事業者 一覧」「ポータルサイト」で検索する層にはもう一方の当事者、すなわち寄附を募る自治体職員が含まれる。自治体側の論点は企業側とは異なる。
まず、内閣府ポータルサイトへの地域再生計画・寄附募集事業の掲載は制度の枠組みの中で行われるものであり、民間サービスへの掲載はその代替ではなく追加の露出手段である。複数の民間サービスに同時に掲載することを妨げる制度上の規定はない。
次に費用である。掲載料固定か、寄附額に対する成果報酬かで、寄附が集まらなかった場合のリスク配分が変わる。成果報酬型は初期費用を抑えられる一方、事業費に充てられる金額が目減りする。これは議会や住民への説明責任に直結するため、どちらの設計を選ぶかは事前に整理しておきたい。
そして、上記の実態調査が示すとおり、国は発注先公表の方向に舵を切っている。令和7年度税制改正では、一定の場合に国への実施報告を義務付けた上で寄附法人名を公表すること、寄附活用事業の発注先(競争入札・随意契約に限る。ただし少額の場合を除く)を地方公共団体において公表することが盛り込まれた。あわせて、地域再生計画の認定取消しを受けた場合の再申請に係る欠格期間(2年間)が創設されている。企画支援を受けた事業者が、そのまま運営を受託する流れをとる場合、入札・契約手続の適正性を説明できる状態にしておく必要がある。
なお制度の適用期限は令和9年度(2027年度)まで延長されている。詳細は適用期限の延長で解説している。
5. 本サイトの立ち位置(開示)
最後に、本記事の書き手自身の立場を明示しておく。localgovs.net を運営する株式会社トクイテンは、自治体の寄附活用事業(農業分野)の運営を受託している事業者であり、本記事の分類でいえば④運営受託型にあたる。つまり、本サイトは企業版ふるさと納税の事業者レーンの外側に立つ独立メディアではなく、当事者が運営する専門メディアである。
そのため本記事では、特定の民間サービスを名指しで推薦したり、序列をつけたりしていない。自社を含め、どの事業者が優れているかを本記事で論じることはしない。代わりに、型の違いと、企業・自治体がそれぞれ確認すべき論点を整理する形をとった。実際にサービスを選定する際は、本記事の軸(費用の負担者・寄附活用事業との距離・発注先公表の方針)を、検討中の事業者に直接ぶつけて回答を得るのが確実である。
企業版ふるさと納税の寄附実績は、内閣府が年度ごとに公表している。令和6年度は寄附企業数8,464社・寄附総額631.4億円と公表された。localgovs.net では、この公表データを自治体単位・事業単位で構造化し、主要数値サマリーおよび寄附受入額ランキングとして、出典とデータ基準日を明示した上で公開している。仲介サービスの比較を始める前に、そもそもどの自治体がどの規模で寄附を受け入れているかという一次的な分布を把握しておくと、提案を受けた際の判断材料になる。