この記事は、Kiva共同創業者で社会起業家のジェシカ・ジャックリーがTEDGlobal 2010で行った講演「Poverty, money — and love」を、寄付や社会貢献を考える読者向けに要約したものです。
以下はKiva共同創業者ジェシカ・ジャックリー個人の体験と見解に基づく講演の要点であり、査読を経た研究ではありません。本記事は英語字幕の内容のみを根拠に要約・翻訳・再構成したもので、登壇者の主張は「〜と語る」「〜と振り返る」という形で記述しています。数値や固有名詞はすべて登壇者が講演内で語ったものです。
そもそも、この講演は何を問いかけているのですか?
ジャックリーは「私たちが互いについて語る物語」「自分の人生について語る物語」、そして何より「互いの物語にどう参加するか」が深く重要だと語ります。講演の核心は、貧困にある人々を「助けの対象」としてだけ見る語り方を見直し、尊厳を尊重するつながりへと転換できないか、という問いです。
彼女はなぜ「従来の寄付」に違和感を持ったのですか?
子どもの頃から、貧しい人々の話を当人からではなく日曜学校の先生を通じて聞き、彼らは食べ物・衣服・住まいといった物資を欠いた存在だと教わったと言います。さらに繰り返し見たのは、悲しみ・苦しみ・病気・戦争といった画像や話でした。その結果、彼女は次のような「予測どおりの反応」に陥ったと振り返ります。
- 貧困の話を聞くたびに気分が悪くなる
- 自分が十分に行動していないことへの罪悪感
- そこから生じる恥の感覚
- 結果として相手から距離を取り、物語を以前ほど真剣に聞かなくなった
彼女は寄付を続けてはいたものの、それは追い詰められたときや、ネガティブな感情を和らげるための「取引」になっていたと語ります。「コーヒー一杯分で子どもの命が救える」といった売り文句に応じ、自分の一日を煩わされずに過ごす権利を買っていた、というのです。彼女はこの交換が、人々を「実体のない集団」にし、支援を「商品」に変えてしまう怖さを指摘します。
何が彼女の考えを変えたのですか?
転機は、ムハマド・ユヌス博士の講演を聞いたことでした。ユヌス博士はグラミン銀行による現代マイクロファイナンスの先駆的な仕事でノーベル平和賞を受賞した人物です。マイクロファイナンスとは「貧しい人々のための金融サービス」であり、なかでもマイクロレンディングは、事業を始めたり育てたりするのを助ける少額の融資を指します。
ジャックリーが心を動かされたのは、ユヌス博士が語る貧しい人々の物語が、それまで聞いてきたものと全く違っていたからでした。そこに登場したのは、強く、賢く、勤勉な起業家たちで、彼らが毎日起きて自分と家族の暮らしを良くしようと行動している姿でした。必要なのは少しの資本だけ。彼女はこの洞察に深く感動し、数週間後に仕事を辞めて東アフリカへ向かいます。
現地で彼女は何を学んだのですか?
ケニア・ウガンダ・タンザニアで3か月かけて、100ドルを受け取って事業を始めた・育てた起業家たちに聞き取りを行いました。そこで聞いたのは、小さくも意味深な変化の物語でした。
- ヤギ飼いが受け取ったお金で数頭のヤギを買い足し、事業の軌道が変わった
- 少し収入が増え、生活水準が向上した
- 子どもを学校へ通わせ始めた
- 蚊帳を買えるようになった
- ドアに鍵をつけて安心を得た
- 客として訪れた彼女に、紅茶に砂糖を入れて出せることを誇りに思った
彼女はまた、現地で一度も寄付を求められなかったと語ります。誰も自分を哀れんでほしいとは思っておらず、すでにやっていることをもっとうまくやり、自分の能力を伸ばしたいと望んでいました。時折聞かれたのは「融資がほしい」という声でした。最良の変化は、人々が自分で最善と信じる方法で人生をコントロールできることから生まれる——たとえ魔法の杖で何でも直せたとしても、自分なら多くを間違えただろう、と彼女は謙虚に振り返ります。
Kivaはどのように生まれ、どう広がったのですか?
新しい友人たちの事業と希望の物語を、自分の友人や家族と共有し、彼らが必要とするお金を融資として届けられないか——この小さなアイデアがKivaになりました。彼女はパートナーの Matt(マット)と作った基本的なウェブサイトとデジタルカメラを持ってウガンダに戻り、7人の起業家の写真と物語を掲載。資金はほぼ一晩で集まりました。
最初の7件の融資が返済された2005年10月、二人はサイトから「ベータ」の表記を外し、正式に立ち上げます。講演時点で語られた成長は次の通りです(いずれも講演内の数値です)。
- 1年目(2005年10月〜2006年):約50万ドルの融資を仲介
- 2年目:合計1,500万ドル
- 3年目:約4,000万ドル
- 4年目:1億ドル弱
- 講演時点(立ち上げから5年未満):25ドル単位で累計1億5,000万ドル超、100万人を超える貸し手と起業家が200の国・地域で参加
「寄付」と「融資」は、つながり方としてどう違うのですか?
ジャックリーは、Kivaの本質は数字よりも「物語」にあると語ります。貧しい人々の物語を語り直し、尊厳を認め、従来の「寄付する側・される側」という奇妙な関係ではなく、尊重・希望・楽観に基づくパートナーシップの関係を築くことが狙いです。彼女が学んだことは次の3つに整理されます。
- 起業家精神とは:明日は今日より良くなると決め、機会を見つけてそれをつかみにいくこと
- 融資はつながりの道具:寄付して「ありがとう」で終わるのと違い、少しずつ返済される過程で対話が続き、関係が育つ口実になる
- 人はお金だけでなく「お金+コミュニティの支え」を選ぶ:同じ条件なら、世界中のコミュニティの励ましが加わった方をより意味ある組み合わせとして選ぶ
彼女は、道で物乞いをする人に近づくときの気持ちと、自分の事業を笑顔で語りたい起業家に出会うときの気持ちの違いを想像してほしいと呼びかけます。空っぽの手で何かを求める人ではなく、差し出すものを持った満ちた手の人。その物語が、互いへの見方と、互いの可能性への信頼を変えるのだ、と。
講演の最後に彼女が伝えたかったことは?
ジャックリーは、KivaやProFounder(友人や家族からの投資で小規模事業者が資金を集めるクラウドファンディングの仕組みとして紹介)はあくまで「道具」「器」にすぎないと強調します。必要なのは、人々が実際にそれを使い、気にかけることです。そして彼女は、私たちを止めているのは「気にかけていないこと」ではなく、「気にかけているからこそ、試して失敗するのを恐れること」だと言います。最も良い贈り物は自分の物語を伝えること、そして「私たちは確かに気にかけている」と思い出させることだ、と。互いを信じ、それを日々実践することが世界を変え、明日を今日より良くする——そう結んでいます。
寄付や社会貢献の理論・事例についての関連コラムは企業の寄附ハブでまとめています。
この動画について
- 登壇者:ジェシカ・ジャックリー(Jessica Jackley)/ Kiva共同創業者・社会起業家
- 主催・講演名:TED(TEDGlobal 2010)「Poverty, money — and love」
- 動画URL:https://www.youtube.com/watch?v=Cqj0sgrNL10
本記事は上記講演の英語字幕のみを根拠に要約したものです。数値や固有名詞は講演内で語られた範囲に限り記載しています。講演者個人の体験と見解であり、査読研究ではありません。
よくある質問(FAQ)
ジェシカ・ジャックリーはどんな人物ですか?
Kivaの共同創業者で社会起業家です。東アフリカへ渡り、現地の起業家たちへの聞き取りを通じて、少額融資による支援のあり方を着想しました。講演では自ら「利益と収益の違いも知らないまま」東アフリカへ向かったと語っています。
マイクロファイナンスとマイクロレンディングとは何ですか?
講演では、マイクロファイナンスを「貧しい人々のための金融サービス」、つまり数ドルで暮らす人のニーズに合わせた銀行サービスのようなものと説明しています。マイクロレンディングは、事業を始めたり育てたりするのを助ける少額の融資を指します。
Kivaはどのくらいの規模に成長しましたか?
講演時点(立ち上げから5年未満)で、25ドル単位の累計1億5,000万ドル超の融資を仲介したと語られています。100万人を超える貸し手と起業家が200の国・地域で参加したとされています。いずれも登壇者が講演内で語った数値です。
なぜ「寄付」より「融資」が良いと語られたのですか?
寄付は受け取って「ありがとう」で完結しがちですが、融資は少しずつ返済される過程で対話が続き、関係が育つ口実になると説明されています。融資はつながりのための興味深い道具だ、というのが彼女の学びです。
この講演から企業や個人の社会貢献に活かせる視点は?
相手を「助けの対象」ではなく、意欲ある起業家として尊重すること、罪悪感で距離を買うのではなく物語に参加し続けること、そして同じ支援でも人は「お金+コミュニティの支え」をより意味あるものとして選ぶ、という視点が示されています。あくまで登壇者個人の見解として参照してください。