企業版ふるさと納税では、寄附の代償として経済的な利益を供与することが禁止されています。これは制度の健全性を維持するための重要なルールであり、地域再生法施行規則(平成17年内閣府令第53号)第13条に定められています。
なぜ禁止されているのか
企業版ふるさと納税は最大約9割の税軽減が受けられる制度です。これに加えて経済的見返りまで認めてしまうと、実質的に「税金を使った取引」となり、制度の趣旨が損なわれます。寄附の自主性・公益性を担保し、地方公共団体間の公平な環境を維持するために、経済的利益の供与は明確に禁止されています。
禁止されている行為
内閣府の解説資料では、以下の行為が明示的に禁止されています。
| 禁止行為 | 具体例 |
|---|---|
| 補助金の交付 | 寄附の代償として補助金を交付すること |
| 低利貸付 | 他の企業より低い金利で貸付を行うこと |
| 入札・許認可での便宜 | 入札時や許認可に関わる場面で特別に便宜を図ること |
| 財産の低価格譲渡 | 合理的理由なく市場価格以下で財産を譲渡すること |
| 換金性の高い物品の供与 | 商品券やプリペイドカードなど換金性の高い商品を渡すこと |
| 寄附の入札条件化 | 寄附しなければ入札に参加できないようにすること |
| 施設の独占的使用 | 寄附によってできた施設を独占的に使用させること |
認められている行為
一方、以下の行為は社会通念上認められるものとして許容されています。
| 認められる行為 | 具体例 |
|---|---|
| 感謝状の贈呈 | 感謝状またはそれに類するものを贈ること |
| 企業名のHP掲載 | HP・広報番組等で他の寄附者と並べて企業名を紹介すること |
| 施設への企業名表示 | 施設等に他の寄附者と並べて企業名を表示すること |
| 記念品の贈呈 | 社会通念上許容される範囲の記念品を贈ること |
| 視察の受け入れ | 寄附先事業の視察を受け入れること |
| 表彰への推薦 | 表彰制度への推薦を行うこと |
判断の基本原則
内閣府のQ&Aでは、寄附という行為と経済的利益の供与が「相互に必然性を伴って予め決まっていなければ、制度上問題ない」とされています。つまり、寄附と利益供与の間に因果関係がなく、事前に取り決められていなければ問題にはなりません。
グレーゾーンのケース
既存の契約関係がある企業からの寄附
寄附前から既に契約関係がある企業からの寄附は、寄附の代償として契約が結ばれたわけではないため、問題ありません。
寄附後の入札参加
寄附後に公正な手続きを踏んだ入札に参加すること自体は問題ありません。ただし、以下の条件が求められます。
- 寄附を行った法人への便宜供与がないこと
- 手続きの公正性・透明性に係る説明責任を十分に果たすこと
違反した場合のペナルティ
| 対象 | ペナルティ |
|---|---|
| 自治体 | 地域再生計画の認定取消の可能性 |
| 自治体 | 企業版ふるさと納税の利用禁止または制限 |
| 自治体 | 令和7年度改正で再申請の欠格期間(2年間)が創設 |
| 企業 | 禁止事項を要求した場合の社会的制裁の可能性 |
令和7年度税制改正での制度強化
令和7年度の税制改正では、制度の健全な発展を図るため、以下の改善策が導入されました。
- 事業の各段階でのチェックリストの導入
- 一者応札の場合等の国への実施報告の義務化
- 寄附活用事業の発注先の公表
- 認定取消しを受けた場合の再申請に係る欠格期間(2年間)の創設
企業版ふるさと納税の制度全体については、企業版ふるさと納税とは?をご覧ください。