企業版ふるさと納税を行った後、最も実務で困るのが法人税申告書の別表記載です。「別表六(二十四)って何?」「どの欄に何を書けばいい?」という経理担当者の疑問に、具体的な記載手順と計算例で答えます。
寄附額をいくらに設定すれば法人税・住民税・事業税それぞれの控除上限を最大化できるかは、税額控除シミュレーション|9割還元計算を逆算する4ステップ(資本金×純利益→寄附額)で先に試算しておくと、別表記載時に「想定より控除されない」という失敗を防げます。
この記事でわかること
- 企業版ふるさと納税に関係する4つの別表・様式の全体像
- 別表六(二十四)の記載項目と書き方をフィールドごとに解説
- 別表十四(二)での損金算入の記載方法
- 地方税(住民税・事業税)申告書の該当欄と記載ポイント
- 寄附額1,000万円の具体的な計算例と記載シミュレーション
※ 本記事は令和7年度税制改正(令和9年度まで延長)後の最新様式に基づいています。実際の申告にあたっては、必ず最新の国税庁様式と税理士にご確認ください。
企業版ふるさと納税で必要な別表・様式の全体像
企業版ふるさと納税の税額控除を受けるには、法人税・法人住民税・法人事業税それぞれの申告書に記載が必要です。まず全体像を把握しましょう。
| 税目 | 別表・様式 | 控除の仕組み | 提出先 |
|---|---|---|---|
| 法人税(損金算入) | 別表十四(二) | 寄附金の全額損金算入 → 約3割の税軽減 | 所轄税務署 |
| 法人税(税額控除) | 別表六(二十四) | 寄附額の10%を税額控除(上限: 法人税額の5%) | 所轄税務署 |
| 法人住民税(都道府県) | 第六号の三様式 | 寄附額の40%を税額控除(上限: 法人住民税法人税割の20%) | 都道府県税事務所 |
| 法人住民税(市区町村) | 第二十号の三様式 | 上記都道府県分の控除残額を控除 | 市区町村 |
| 法人事業税 | 第六号様式 | 寄附額の20%を税額控除(上限: 法人事業税額の20%) | 都道府県税事務所 |
合計で最大約9割(損金算入の約3割+税額控除の6割)が軽減されます。詳しい控除の仕組みは税額控除シミュレーションで解説しています。
別表六(二十四)の書き方【法人税の税額控除】
法人税の確定申告時に最も重要な別表が「別表六(二十四):認定地方公共団体の寄附活用事業に関連する寄附をした場合の法人税額の特別控除に関する明細書」です。
別表六(二十四)の正式名称と入手先
- 正式名称: 別表六(二十四)「認定地方公共団体の寄附活用事業に関連する寄附をした場合の法人税額の特別控除に関する明細書」
- 根拠法: 租税特別措置法第42条の12の2
- 入手先: 国税庁ウェブサイトの確定申告書等の様式(法人税関係)からダウンロード
注意: 令和7年度税制改正で制度が延長された際に別表番号が変更される場合があります。申告年度の最新様式を必ず確認してください。
主な記載項目と書き方
別表六(二十四)の記載欄を上から順に解説します。
| 欄番号 | 記載項目 | 記載内容・ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 寄附先の地方公共団体名 | 正式名称で記載(例: 「北海道○○市」)。複数自治体の場合は行を分ける |
| 2 | 地域再生計画の認定番号 | 寄附先自治体から交付される認定書に記載の番号。自治体に確認して正確に転記 |
| 3 | 寄附年月日 | 寄附金受領証明書に記載された日付。事業年度内であることを必ず確認 |
| 4 | 寄附金額 | 受領証明書の金額と一致させる(10万円以上が制度要件) |
| 5 | 特別控除額の計算 | 「寄附額 × 10%」と「法人税額 × 5%」のいずれか小さい方 |
| 6 | 法人税額の特別控除額(合計) | 複数寄附の場合は各行の控除額を合算。別表一に転記する金額 |
記載例: 寄附額1,000万円の場合
3月決算法人(法人税額5,000万円)が北海道A市に1,000万円を寄附した場合の別表六(二十四)の記載例です。
計算ステップ
- 寄附額ベース: 1,000万円 × 10% = 100万円
- 法人税額ベース: 5,000万円 × 5% = 250万円
- 判定: 100万円 < 250万円 → 100万円が控除額
| 欄 | 項目 | 記載額 |
|---|---|---|
| 4 | 寄附金額 | 10,000,000円 |
| 5 | 寄附額 × 10% | 1,000,000円 |
| - | 法人税額 × 5% | 2,500,000円 |
| 6 | 特別控除額 | 1,000,000円 |
この100万円を別表一(一)の「法人税額の特別控除額」欄に転記します。
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別表十四(二)の書き方【損金算入】
企業版ふるさと納税の寄附金は税法上「特定寄附金」に該当し、全額が損金に算入されます。この損金算入を正しく申告するのが別表十四(二)「寄附金の損金算入に関する明細書」です。
記載のポイント
| 記載欄 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 特定寄附金の額 | 企業版ふるさと納税の寄附額を記載 | 国・地方公共団体への寄附金として記載 |
| 損金算入限度額 | 特定寄附金は限度額の制限なし | 一般寄附金の損金算入限度額とは別枠 |
| 損金算入額 | 寄附額の全額 | 他の特定寄附金がある場合は合算して記載 |
実務ポイント: 損金算入による税軽減は約3割(法人実効税率相当)です。この3割は「当然の損金算入」で得られるもので、企業版ふるさと納税の上乗せの税額控除6割(法人住民税4割+法人税1割+法人事業税2割、ただし法人住民税の控除残額が法人税から追加控除可)と合算して最大約9割の軽減になります。
損金算入の記載例(1,000万円寄附の場合)
別表十四(二)への記載
| 区分 | 金額 |
|---|---|
| 特定寄附金の額(国・地方公共団体) | 10,000,000円 |
| 損金算入額 | 10,000,000円(全額) |
企業版ふるさと納税の寄附金は「国又は地方公共団体に対する寄附金」として全額損金算入されます。一般寄附金の損金算入限度額計算には影響しません。
地方税の申告書への記載方法
法人税の別表だけでなく、地方税(法人住民税・法人事業税)の申告書にも記載が必要です。ここを忘れると税額控除の約6割分を取り損ねることになるため要注意です。
法人住民税(都道府県分): 第六号の三様式
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 記載する様式 | 第六号の三様式(道府県民税の申告書) |
| 記載欄 | 「税額控除額」欄の「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業に関連する寄附」 |
| 控除額 | 寄附額 × 40%(上限: 法人住民税法人税割額の20%) |
| 添付書類 | 寄附金受領証明書の写し |
法人住民税(市区町村分): 第二十号の三様式
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 記載する様式 | 第二十号の三様式(市民税の申告書) |
| 記載欄 | 都道府県分と同じく税額控除の該当欄 |
| 控除額 | 都道府県分で控除しきれなかった残額 |
法人事業税: 第六号様式
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 記載する様式 | 第六号様式(事業税の申告書) |
| 記載欄 | 「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」の控除欄 |
| 控除額 | 寄附額 × 20%(上限: 法人事業税額の20%) |
寄附額1,000万円の全税目シミュレーション
ここまでの別表記載を踏まえ、実際に寄附額1,000万円のケースで全税目の控除額を計算してみましょう。
前提条件
- 3月決算法人、法人税額5,000万円
- 法人住民税(法人税割)1,000万円、法人事業税1,500万円
- 北海道A市の認定地域再生計画事業に1,000万円を寄附
| 税目 | 別表・様式 | 計算式 | 控除額 |
|---|---|---|---|
| 損金算入 | 別表十四(二) | 1,000万 × 約30%(実効税率) | 約300万円 |
| 法人税 税額控除 | 別表六(二十四) | min(1,000万×10%, 5,000万×5%) = min(100万, 250万) | 100万円 |
| 法人住民税 都道府県 | 第六号の三 | min(1,000万×40%, 1,000万×20%) = min(400万, 200万) | 200万円 |
| 法人住民税 市区町村 | 第二十号の三 | 400万 − 200万 = 200万(控除残額) | 200万円 |
| 法人事業税 | 第六号様式 | min(1,000万×20%, 1,500万×20%) = min(200万, 300万) | 200万円 |
| 合計軽減額 | 約1,000万円(≒寄附額の100%) | ||
※ 上記は税額が十分にある場合の最大ケース。各税額の上限に達する場合は軽減率が下がります。自社の上限額は税額控除シミュレーション(9割還元計算の4ステップ)またはシミュレーターで試算できます。
申告時に必要な添付書類チェックリスト
税額控除の申告時に必要な書類を漏れなく準備するためのチェックリストです。
| 書類 | 入手先 | 提出先 |
|---|---|---|
| 寄附金受領証明書(原本) | 寄附先の自治体 | 所轄税務署(法人税申告時に添付) |
| 寄附金受領証明書の写し | 原本のコピー | 都道府県税事務所・市区町村(地方税申告時) |
| 地域再生計画の認定書の写し | 寄附先の自治体に依頼 | 所轄税務署 |
| 寄附活用事業の事業計画書 | 寄附先の自治体 | 所轄税務署(求められた場合) |
経理担当者向けTips: 寄附金受領証明書は自治体によって発行までの期間が異なります(即日〜数週間)。決算月の2ヶ月前までに寄附を実行し、証明書が確定申告の期限に間に合うようスケジュールを組みましょう。手続き全体の流れは手続き完全ガイドで詳しく解説しています。
よくある記載ミスと対処法
ミス1: 別表六(二十四)の控除額計算で上限チェック漏れ
寄附額 × 10% がそのまま控除額と思い込み、法人税額 × 5% の上限を確認しないケースです。特に赤字決算や税額が少ない期は注意。法人税額が小さいと10%ルールではなく5%ルールが適用され、控除額が大幅に減ります。
ミス2: 地方税の申告書への記載忘れ
法人税の別表六(二十四)は記載したのに、法人住民税・法人事業税の申告書に記載するのを忘れるケースです。約6割の控除を取り損ねます。法人税の申告と地方税の申告は提出先が異なるため、経理担当者間の連携が重要です。
ミス3: 事業年度をまたぐ寄附の帰属年度の誤り
3月末に寄附を実行したが、寄附金受領証明書の日付が翌年度になっている場合があります。税額控除の適用は証明書の日付ではなく実際の寄附日で判断されますが、証明書との整合性が問われるため、事前に自治体と日付を確認しましょう。
ミス4: 複数自治体への寄附の合算方法の誤り
複数の自治体に寄附した場合、別表六(二十四)では各自治体ごとに行を分けて記載し、控除額の合計を算出します。控除限度額(法人税額 × 5%)は自治体ごとではなく、全寄附の合計額に対して判定する点に注意してください。
よくある質問
Q: 税務ソフト(e-Tax対応)で別表六(二十四)は入力できますか?
はい。主要な法人税申告ソフト(e-Tax、達人シリーズ、freee申告、マネーフォワード クラウド確定申告など)は別表六(二十四)の入力に対応しています。ソフトのバージョンが最新であることを確認してください。
Q: 初めての申告で不安です。税理士に頼むべきですか?
初回は税理士への相談を強くおすすめします。特に控除限度額の計算と各別表間の整合性チェックは、慣れていないとミスしやすい部分です。2回目以降は前年の申告書をテンプレートとして使えるため、自社対応も可能になります。
Q: 中間申告でも税額控除は使えますか?
企業版ふるさと納税の税額控除は確定申告時のみ適用されます。中間申告(予定納税)では適用できません。ただし、中間申告時に寄附を実行しておき、確定申告でまとめて控除を受けることは可能です。
Q: グループ通算制度(旧連結納税)の場合はどうなりますか?
グループ通算制度を適用している場合、企業版ふるさと納税の税額控除は各通算法人ごとに計算・適用されます。寄附を行った通算法人が個別に別表六(二十四)を作成して申告します。グループ全体での控除額の調整は行われません。
まとめ: 別表記載の3つのチェックポイント
- 別表六(二十四)で法人税の税額控除を申告(寄附額×10% vs 法人税額×5%の小さい方)
- 別表十四(二)で損金算入を申告(特定寄附金として全額損金算入)
- 地方税の申告書を忘れずに提出(住民税+事業税で最大6割の控除)
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