この記事のポイント(独自集計)
- 令和5→6年度で受入総額が416.3億円→620.1億円・+49%急増(当サイト独自集計/内閣府公表値ベースでも470億→631億・+34%増)
- +49%増の正体は「件数+8.5%」より「1件あたり単価+37%」 ── 同じプレイヤーが寄附の桁を上げている構造
- 単価上昇の3ドライバ:能登半島地震復興(石川県)/大阪・関西万博関連(大阪府)/令和9年度末まで延長確定の制度安定化
- 能登(石川県全体44.5億・うち輪島市16.9億)+万博(大阪府全体51.8億・うち大阪府本体39.9億)=合計96.3億円で、国全体の R5→R6 増加分(+161億・内閣府ベース)のうち約28%を直接説明
- 新規参入企業の伸び(+10.3%)は鈍化フェーズ=「リピーター深化」型の市場成熟
- CSR担当者への示唆:自社寄附額帯の見直し(数百万→数千万)と複数年度継続戦略
1. 数字で見る令和5→6年度の変化
当サイトが自治体別寄附実績PDFから独自集計した結果、令和5年度・6年度の主要5指標は次のように変化しています。
| 指標 | 令和5年度 | 令和6年度 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 寄附受入総額 | 416.3億円 | 620.1億円 | +49.0% |
| 寄附プロジェクト件数 | 1,515 | 1,643 | +8.5% |
| 寄附先自治体数 | 1,449 | 1,577 | +8.8% |
| 寄附企業数 | 6,514 | 7,183 | +10.3% |
| 1プロジェクトあたり平均額 | 約2,748万円 | 約3,775万円 | +37.4% |
| 1企業あたり平均寄附額 | 約639万円 | 約863万円 | +35.0% |
出典:当サイトが内閣府「企業版ふるさと納税 寄附実績一覧」(令和5年度/令和6年度)から自治体×事業単位で集計。内閣府公表の政策分野別総額は令和5年度470.0億円→令和6年度631.4億円(+34%)。集計範囲の違いにより約10〜50億円の差が生じますが、+49% vs +34% という違いは、当サイト集計は「事業単位の合算」、内閣府公表は「件数=企業×事業の組合せ」でカウントしているためです。
2. +49%増の正体は「件数」より「単価」
金額成長率 +49% は、寄附プロジェクト件数の伸び(+8.5%)と1件あたり単価の伸び(+37.4%)の積で説明できます。
1.085(件数増) × 1.374(単価増) ≈ 1.490(金額増 +49%)
つまり、新しい自治体が大量に参入したわけでも、新規企業が殺到したわけでもありません。同じ枠組みの中で、1件あたりの寄附の桁が上がったのが本質です。R5の平均1件 2,748万円が R6 では3,775万円に。差額 約1,027万円(+37%)が、すべての参加自治体に薄く広く積み上がりました。
CSR担当者にとっての含意:「1自治体あたり数百万円」が業界の標準寄附額だった時代から、「1自治体あたり数千万円」「合計で1億円超」が業界平均に近づくフェーズに入りました。実質負担割合は1割(最大9割税軽減)のため、寄附額1,000万円なら自社の手出しは100万円。控除上限早見表と寄附額シミュレーターで自社の許容ラインを再確認すべきタイミングです。
3. 単価が+37%跳ねた3つのドライバ(独自分析)
令和6年度の急成長を最も特徴づける2つの集中テーマが「能登復興」と「大阪・関西万博」です。内閣府公表の都道府県別寄附実績から R5→R6 の動きを整理すると、両者だけで国全体の増加分(+161億円・R5の470億→R6の631億)のうち約28%を直接説明できます。
| 注目県 | 令和5年度 寄附額 | 令和6年度 寄附額 | 増加額 | 前年比 | 国全体増加への寄与 |
|---|---|---|---|---|---|
| 石川県(能登復興) | 37.9億円 | 44.5億円 | +6.6億円 | +17% | 約4% |
| 大阪府(万博関連) | 13.4億円 | 51.8億円 | +38.5億円 | +287% | 約24% |
| 2県合計 | 51.3億円 | 96.3億円 | +45.0億円 | +88% | 約28% |
出典:内閣府「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の令和6年度寄附実績について(概要)」(令和7年9月19日公表)の都道府県別寄附実績表より作成。国全体増加分は R5 469.99億→R6 631.40億 = +161.41億をベース。
ドライバ①:能登半島地震復興 ── 石川県全体44.5億円、うち輪島市16.9億円
令和6年1月発災の能登半島地震を受け、石川県内自治体への企業版ふるさと納税が R6 通期で 44.49億円(前年37.87億から +6.62億・+17.5%)に達しました。注目すべきは寄附先の集中度で、輪島市単独で 16.93億円(331件)・全国自治体ランキング第3位。石川県全体の38%が輪島市に集中したことになります(石川県の都道府県別実績ページで他の能登地方自治体も含めた内訳を確認可能)。
石川県の数字が「+17%」と国全体(+34%)より低く見えるのは、令和5年度時点でも 1,026件・約23億円の寄附を受領した実績(R5全国第3位は石川県本体)が既に積み上がっていたためで、震災発生(2024年1月)直後の駆け込み寄附が R5 末期にも一部入っていた影響があります。R6 は震災後初の通期年度として、被災市町への直接寄附(輪島市16.9億/珠洲市/能登町/七尾市/穴水町)に重心が移行した構図です。
復興CSRは「災害発生→社会的関心が集中している期間内に寄附する」という時間圧があり、企業の決裁スピードも通常の地方創生案件より早い傾向があります。建設・物流・小売・金融など本業スキルを生かせる業種を中心に「数千万円〜億円」の単一寄附事例が積み重なりました。
ドライバ②:大阪・関西万博関連 ── 大阪府全体51.8億円、うち大阪府本体39.9億円(前年比+480%)
令和7年(2025年)4月開幕の大阪・関西万博を控え、大阪府向け寄附は R6 で 51.83億円(前年13.38億から +38.45億・+287%)まで急増しました。これは令和6年度の都道府県別増加額として最大で、国全体の R5→R6 増加分(+161億)のうち約24%を大阪府1県だけで説明している計算になります。
うち、大阪府(都道府県本体)単独の寄附額は R5 6.886億 → R6 39.94億(75件)と +33.05億・+480% の桁違いの跳ね方をしており、全国自治体ランキング第2位(横浜市41.04億の次)。大阪府が主体の地域再生計画(大阪府まち・ひと・しごと創生推進計画)への集中投資が確定値で確認できます。万博関連事業(会場跡地整備・国際文化交流・観光基盤強化・スマートシティ実証)は単発で大型化しやすく、IT・通信・金融・小売の都市型業種が中心となって寄附単価を引き上げました(大阪府の都道府県別実績ページに自治体別ランキングと寄附企業一覧)。
「万博開催前年に駆け込み寄附する」「万博を契機にレガシー事業へ参加する」という二段構えのストーリーが成立しやすく、稟議書での社内説明も容易だった点が、寄附単価の桁上げに寄与しています。なお、能登(+6.6億)と万博(+38.5億)以外の +116億分は神奈川県横浜市(R6 41.04億・全国1位)、滋賀県大津市(R6 16.65億)、栃木県本体(R6 16.61億)、広島県呉市(R6 15.57億)など個別大型寄附の集積によるもので、特定テーマに集中していない点も令和6年度の特徴です。
ドライバ③:令和9年度末まで延長確定による制度安定化
令和7年度税制改正で令和9年度(2027年度)末まで制度が延長確定しました。詳細は制度延長ガイドに整理していますが、これにより「いつ廃止されるかわからない」という不確実性が後退し、企業は中期計画ベースで大型寄附を組み込みやすくなりました。
単年度の節税目的だけでなく、「複数年度にわたるCSRストーリーの一部として企業版ふるさと納税を位置づける」企業が増えており、これも1件あたり寄附単価の上昇に寄与しています。大臣表彰受賞自治体の事例では、特定企業が同一自治体に複数年継続寄附するケースが顕著です。
4. 件数+8.5%・企業数+10.3%は「新規参入の鈍化」のサイン
当サイト集計では令和5→6年度の寄附企業数は+10.3%増。一見堅調ですが、過去の伸び率と並べると鈍化傾向が明確です。
| 年度推移 | 寄附企業数(内閣府公表) | 前年比 |
|---|---|---|
| 令和元年度 | 1,117 | ─ |
| 令和2年度 | 1,640 | +47% |
| 令和3年度 | 3,098 | +89% |
| 令和4年度 | 4,663 | +50% |
| 令和5年度 | 7,680 | +65% |
| 令和6年度 | 8,464 | +10% |
令和2年度の税額控除割合引上げ(最大6割→9割)を起点に、令和3〜5年度は毎年+50%超で企業数が拡大していました。それが令和6年度に+10%まで急減速。新規参入企業の獲得余地は徐々に縮小しつつあり、市場は「リピーター深化」フェーズへ移行しています。
これは「もう遅いか?」という意味ではなく、「新規参入の競争」から「既存寄附先との関係構築・継続寄附による差別化」が稟議書上の論点になるという意味です。大臣表彰を狙う場合、複数年度継続が要件の一つとなるため、令和7年度の早期寄附判断が翌々年の表彰候補入りに直結します。
5. CSR担当者が読み解くべき3つの示唆
示唆①:自社寄附額帯の見直し(数百万→数千万へのシフト)
1件あたり平均額が3,775万円に到達した以上、「100〜500万円帯」の寄附は業界平均から見れば小規模カテゴリです。実質負担1割で寄附額の桁を一つ上げる(500万→5,000万)試算をシミュレーターガイドで再確認し、稟議書での説明可否を経理部門と早期にすり合わせるのが推奨アクションです。
示唆②:既存寄附先との関係深化(リピーター戦略)
令和7年度以降は「新規参入競争」より「既存寄附先での継続実績」が稟議書の説得力を左右します。同一自治体に複数年度寄附することで、地域貢献ストーリーが具体化し、サステナビリティレポート・統合報告書での記載分量も増えます。サステナビリティレポート活用ガイドを参照してください。
示唆③:令和7年度の事業認定スケジュールに先回りする
地域再生計画の認定審査は年3回(4月/9月/1月)。令和7年度の寄附を最適化するには、令和7年4〜9月の認定計画候補リストを事業一覧で先回り把握しておくことが有効です。能登復興・万博関連のように単発で大型化しやすいテーマは、認定タイミングと寄附決断スピードの両方が問われます。
6. まとめ:単価+37%が告げる市場の成熟
令和6年度の+49%急増は「予期しない大繁盛」ではなく、「同じ枠組みに、より大きな金額が流れ込むようになった」という市場の質的変化です。1件あたり単価+37%が示すのは、企業版ふるさと納税が「お試し的なCSR」から「億単位の中期投資テーマ」へと位置づけを変えつつある事実。
令和7年度に向けて、CSR担当者がチェックすべきは「自社寄附額帯の妥当性」「既存寄附先での継続戦略」「令和9年度末までの中期計画化」の3点です。当サイトでは都道府県別ガイドと2024年確定版ランキングで具体的な寄附先候補を絞り込めるよう独自集計を更新しています。
FAQ:令和6年度急増についてよく聞かれる6問
Q1. +49%伸びた一番の要因は?
「件数」ではなく「1件あたり単価」の上昇が主因です。寄附プロジェクト件数は+8.5%しか増えていない一方、1件あたりの平均寄附受入額が約2,748万円→約3,775万円(+37.4%)へ跳ねました。具体的には、大阪・関西万博関連で大阪府全体が13.4億→51.8億円・+287%(うち大阪府本体6.9→39.9億・+480%)と急増、能登半島地震復興で石川県全体が37.9→44.5億・+17%(うち輪島市16.9億・全国3位)。能登+万博の合計96.3億円で、国全体の増加分+161億のうち約28%を直接説明できます。
Q2. 能登と万博でそれぞれいくら寄附が集まったの?
能登(石川県全体):令和6年度 44.49億円(前年37.87億・+17.5%)。うち輪島市単独で 16.93億円(331件・全国自治体ランキング3位)。R5時点で既に23億円が石川県本体に集中していた(R5全国3位)反動を含む。
万博(大阪府全体):令和6年度 51.83億円(前年13.38億・+287%)。うち大阪府本体だけで39.94億円(75件・全国2位・前年比+480%)。万博開幕(2025年4月)の前年度=R6 が駆け込み年度になった。
2県合計 96.3億円=令和5→6年度の国全体増加分+161億の約28%を直接説明。残り72%は神奈川県横浜市(R6 41.04億・全国1位)、滋賀県大津市(16.65億)、栃木県本体(16.61億)など全国分散の中規模・大型寄附が積み重なった結果。
Q3. 内閣府公表値(631.4億円)と当サイト集計(620.1億円)はなぜ違う?
内閣府は政策分野別総額として令和6年度631.4億円を公表しています。一方、当サイトは「寄附実績一覧」PDFから自治体×事業単位で再集計しているため、合算範囲の違い(複数計画間の按分・端数処理)で約11億円少ない620.1億円となります。なお内閣府の「件数」18,457件は企業×事業の組合せ(複数企業が同一事業に寄附すれば複数件)、当サイトの「プロジェクト件数」1,643件は自治体側の認定計画単位なので、件数の数え方が異なります。傾向(+49%急増・単価上昇)の構造は両者とも一致します。
Q4. 新規参入企業は増えていない?
新規参入は鈍化しつつあります。寄附企業数の前年比は令和2→3年度+89%、3→4年度+50%、4→5年度+65%と二桁伸びていた一方、5→6年度は+10%まで急減速(内閣府公表ベース)。CSR担当者向けの示唆としては「新規参入の競争」から「既存寄附の積み増し(リピーター深化)」フェーズへの移行が始まっています。
Q5. 令和7年度(2025年度)も+49%ペースで伸びる?
+49%は能登復興と万博関連という単発要因が乗った結果のため、令和7年度に同水準を維持する保証はありません。ただし、令和9年度末(2028年3月31日)まで制度延長が確定したことで「期限切れリスク」が後退し、大型寄附の決断ハードルは下がり続けます。年率+20〜30%帯での継続成長が現実的なベースラインです。
Q6. CSR担当者として今すぐ取るべきアクションは?
①自社寄附額帯を見直す(数百万円帯から数千万円帯への引き上げが業界平均化)、②既存寄附先との関係深化(複数年度継続で大臣表彰候補化)、③令和7年度の事業認定スケジュール(4月/9月/1月の年3回審査)に合わせて稟議書ドラフトを着手、の3点です。