マッチングギフトとは何か
マッチングギフト(Matching Gift)とは、社員が自分で選んだ非営利団体に寄付をすると、雇用主である会社が同額または一定比率を同じ団体に上乗せして寄付する、福利厚生型のコーポレート・ギビング(企業による社会貢献的寄付)の手法です。寄付支援サービスのDouble the Donationによれば、典型的な流れは「社員が団体に寄付する → 寄付の証憑(レシート等)を会社に提出する → 会社が社内規程への適合を確認する → 会社が同じ団体へマッチング分を送金する」というものです。
マッチングの比率
マッチングの比率は1:1(社員の寄付額と同額を会社が上乗せ)が主流です。CECPの報告書「Giving in Numbers 2024」によると、大企業の通年型マッチングプログラムでは1:1の比率が91%を占めています。
どれくらい普及しているのか(CECP統計)
企業の社会貢献を調査する団体CECPの「Giving in Numbers 2024」(多国籍の大企業およそ206〜219社、2023年実績)は、マッチングギフトの普及度について次のような一次統計を示しています。
- 大企業の94%がマッチングギフト制度を提供している。最も多い形態は通年で受け付ける「通年型」で、79%が提供している。
- マッチングは企業の総コミュニティ投資(TCI)の12%を占め、マッチング額の中央値は160万米ドル。
- 業種別に見ると、TCIに占めるマッチングの比率は金融が最高で17%、Consumer Staples(生活必需品)が最低で3%。
- 社員のマッチング参加率は平均でおよそ20%。Communications(通信)業界が最高の31%。
社員ボランティアとの組み合わせ
CECPの同じ報告書は、社員が時間を提供するボランティア型の取り組みも広がっていることを示しています。社員ボランティアの参加率の中央値は23%(2023年)で、従業員1万人未満の企業では29%、5万人超では17%と、規模が小さい企業ほど参加率が高い傾向があります。ボランティア時間の中央値は2021年から2023年で75%増加しました。また、有給ボランティア休暇(VTO)は70%、バーチャル・ボランティアは85%の企業が提供しています。
企業の実例:MicrosoftとApple
Microsoft
Microsoftの公式情報によると、同社の社員寄付プログラムは1983年に始まり、累計で17億米ドル超を生み出してきました。2019年には、米国の社員寄付と会社のマッチングを合わせて1.81億米ドル、ボランティアは82.5万時間、社員参加率は77%に達したとされています。ボランティアにかかった時間に対して寄付をマッチングする仕組み(後述のDollars for Doers)は2005年に導入されました。
Apple
Appleの公式ニュースルームによると、同社のEmployee Givingプログラムは開始から10年で、世界39,000の団体におよそ7.25億米ドルを生み出し、2021年単年では1.2億米ドル超を創出しました。社員約68,000人が累計でおよそ200万ボランティア時間を提供しています。社員の寄付1ドル、ボランティア1時間に対して、会社が同じ団体へマッチングする仕組みです。
関連する社員参加型の手法
Dollars for Doers(ボランティア時間マッチ)
Dollars for Doersは、社員がボランティアに費やした時間に応じて、会社がその団体へ金額を寄付する仕組みです。CECPの「Giving in Numbers 2024」によると、53%の企業がこの仕組みを提供しており、最も多いレートは1時間あたり10米ドル、次いで25米ドルでした。
ペイロール・ギビング(給与天引き寄付)
ペイロール・ギビングは、給与天引きで継続的に寄付する、米国で最も歴史の古い部類に入る社員参加型の寄付手法です。America's Charitiesによると、米国では年間で推計50億米ドルが慈善団体に向けて生み出されているとされています。
業界推計でみるマッチングギフトの規模と課題
以下はDouble the Donationによる業界推計です(一次統計ではなく業界推計である点に留意してください)。業界推計では、Fortune500企業の65%がマッチングを提供しており、寄付者の3人に1人が「マッチされると分かれば寄付額を増やす」と回答しているとされます。一方で、業界推計では年間40〜70億米ドルのマッチング枠が未請求のまま(=活用率の低さ)になっているとも指摘されています。
各社のマッチング条件(要・公式確認)
以下はDouble the Donationのデータベース由来の各社条件です。Microsoftの上限額・比率・ボランティアレートは同社公式情報とも整合しています。Apple・Goldman Sachs・JPMorgan Chaseの数値はDouble the Donationのデータベースを出所としており、本稿では各社公式での独立した確認が取れていません。いずれも制度は随時変わりうるため、最新の内容は必ず各社公式でご確認ください。
- Microsoft:上限15,000米ドル/年・比率1:1、ボランティア25米ドル/時。(公式情報と整合)
- Apple:上限10,000米ドル/年・比率1:1、25米ドル/時。(Double the Donation由来・各社公式で要確認)
- Goldman Sachs:上限20,000米ドル/年。(Double the Donation由来・各社公式で要確認)
- JPMorgan Chase:上限1,000米ドル/年。(Double the Donation由来・各社公式で要確認)
日本企業が学べる示唆(米国データからの推論)
ここで述べる示唆は、いずれも米国のデータからの推論であり、日本での効果は未検証である点を必ず踏まえてください。
- 米国では1:1のマッチングが主流で大企業の94%が制度を持つ(CECP)など、マッチングが標準的な福利厚生として根付いています。米国ではこうした普及がみられますが、日本での効果や定着の度合いは未検証です。
- 業界推計では寄付者の3人に1人が「マッチされると分かれば増額する」と答えており、社員の寄付行動を後押しする可能性が示唆されます。ただしこれは米国での推計であり、日本での効果は未検証です。
- 業界推計では年間数十億米ドル規模のマッチング枠が未請求であり、制度を作るだけでなく「社員に知らせ、申請しやすくする」運用が鍵になりうると考えられます。これも米国の状況からの推論で、日本での効果は未検証です。
- MicrosoftやAppleの例のように、金銭の寄付とボランティア時間の双方をマッチングする組み合わせが、社員参加を広げる一つの形として参考になり得ます。ただし日本での効果は未検証です。
出典
- CECP「Giving in Numbers 2024」 https://cecp.co/wp-content/uploads/2024/11/Giving-in-Numbers-2024.pdf
- Microsoft(公式) https://news.microsoft.com/source/features/work-life/employee-giving
- Apple(公式ニュースルーム) https://www.apple.com/newsroom/2021/12/apple-marks-a-year-of-giving-in-the-communities-it-calls-home/
- America's Charities https://www.charities.org/employee-workplace-giving/
- Double the Donation(マッチングギフトの仕組み) https://doublethedonation.com/corporate-matching-gift-programs/
- Double the Donation(業界推計の統計) https://doublethedonation.com/matching-gift-statistics/
よくある質問(FAQ)
マッチングギフトとは何ですか?
社員が自分で選んだ非営利団体に寄付すると、雇用主である会社が同額または一定比率を同じ団体に上乗せして寄付する、福利厚生型のコーポレート・ギビングです。Double the Donationによれば、社員が寄付→証憑提出→規程適合確認→会社が団体へマッチング送金、という流れで運用されます。
マッチングの比率はどれくらいが一般的ですか?
1:1(社員の寄付と同額を会社が上乗せ)が主流です。CECP『Giving in Numbers 2024』によると、大企業の通年型マッチングプログラムでは1:1の比率が91%を占めています。
海外でマッチングギフトはどの程度普及していますか?
CECP『Giving in Numbers 2024』(多国籍大企業約206〜219社、2023年実績)では、大企業の94%がマッチングギフト制度を提供し、最多は通年型(79%が提供)です。マッチングは総コミュニティ投資の12%を占め、マッチング額の中央値は160万米ドルでした。なお業界推計(Double the Donation)では、Fortune500の65%が提供しているとされます。
MicrosoftやAppleはどのような実績がありますか?
Microsoft公式によると、社員寄付プログラムは1983年開始で累計17億米ドル超を創出し、2019年は米国社員と会社マッチで1.81億米ドル、ボランティア82.5万時間、参加率77%でした。Apple公式によると、Employee Givingは開始10年で世界39,000団体に約7.25億米ドルを創出し、2021年単年で1.2億米ドル超、社員約68,000人が累計約200万ボランティア時間を提供しています。
Dollars for Doersやペイロール・ギビングとは何ですか?
Dollars for Doersは社員のボランティア時間に応じて会社が団体へ金額を寄付する仕組みで、CECPによると53%の企業が提供し、最多レートは1時間あたり10米ドルです。ペイロール・ギビングは給与天引きで継続寄付する米国最古級の手法で、America's Charitiesによると米国では年間推計50億米ドルが慈善団体に向けて生み出されています。
各社のマッチング上限額はどれくらいですか?
Double the Donationのデータベース由来の情報では、Microsoftは上限15,000米ドル/年・1:1(ボランティア25米ドル/時)、Appleは上限10,000米ドル/年・1:1(25米ドル/時)、Goldman Sachsは上限20,000米ドル/年、JPMorgan Chaseは上限1,000米ドル/年とされています。MicrosoftはMicrosoft公式情報とも整合していますが、Apple・Goldman Sachs・JPMorgan Chaseについては本稿では各社公式での独立した確認が取れていません。制度は随時変わりうるため、最新の内容は必ず各社公式でご確認ください。