「自社のCSR・ESG戦略の中で、製造業ならではの企業版ふるさと納税の活用を稟議に盛り込みたい」という相談が、CSRや経営企画部門から増えています。本記事では、内閣府の公表データとlocalgovs.netの独自集計(2026年4月時点)をもとに、製造業の企業版ふるさと納税の実例を紹介。物納(現物寄附)やEV化、原料国産化、防災BCP連動といったテーマを、代表4社の実名で詳しく解説。中小製造業でも稟議を通す可能性がある活用パターンまで整理しています。

業種別総論については 企業版ふるさと納税 事例集(業種別30件) に掲載していますが、本記事はその「製造業フォーカス版」として、物納・EV/カーボンニュートラル・原料国産化・防災BCP連動・モビリティ実証の5つの類型を、立体的に掘り下げます。

この記事のポイント

  • localgovs.net 独自集計:内閣府25分類のうち、「モノづくり」分野は63事業/51市町村/26都道府県、「エネルギー」は105事業/68市町村/28都道府県、「環境保全」は192事業/159市町村/44都道府県。重複除去で合算すると283事業/227市町村に広がっている(2026年4月時点)
  • 令和3年度税制改正で「物品等による寄附」が制度上明確に許容された。これにより、製造業は自社の製品や設備をそのまま地方自治体に物納できるようになった。物納の評価額や仕訳の論点については 現物寄附の要件・評価額・仕訳 で別途整理
  • 代表4軸:①サンエイ×愛知県豊田市(「里モビLIFE」高齢者向け超小型EV/令和7年度大臣表彰自治体)、②コスモ石油×三重県四日市市(路線バスEV化・三重交通連携/令和7年度大臣表彰自治体)、③龍角散×秋田県八峰町(カミツレ・キキョウ等の生薬国産化・4年連続寄附)、④大塚商会×愛媛・高知ほか12市町村圏(防災物納+災害時相互応援協定)
  • 中小製造業でも、自社製品の物納・地元自治体マルチサイト寄附・サプライチェーン共同寄附の3パターンで稟議が通る可能性がある

令和6年度の制度実績と製造業の位置づけ

令和6年度(2024年度)の企業版ふるさと納税は、内閣府が公表したデータによると、寄附企業が8,464社、寄附額は631億円にのぼる(出典: 内閣府 令和6年度 企業版ふるさと納税の寄附実績一覧)。この中で、製造業が特に力を入れているのは、「現物寄附(自社製品・設備の物納)」と「カーボンニュートラル(CN)・EV化」の二つだ。

制度的な追い風も確実にある。令和3年度に内閣府が『物品等による寄附に関するQ&A』を公表し、物品による寄附が制度上明確に許容されることを運用上確認した。これにより、メーカーは現金ではなく、自社製品(防災資機材・EV車両・医療機器・農業資材)をそのまま自治体に物納できるようになった。物納額は寄附時点の市場価額で評価され、現金寄附と同様に最大約9割の税負担軽減が受けられる。さらに令和7年度の税制改正では、制度自体が令和9年度(2028年3月)まで延長された。設備投資や工場移転と組み合わせた中期的な計画も、現実味を帯びてきた。

localgovs.net 独自集計:製造業の事業はどこにどれだけあるか

内閣府の25分類の中で、製造業のCSR担当者が直接関与できるのは、「19: モノづくり」「16: エネルギー」「21: 環境保全」の3つ。当サイトに登録された全国認定事業を分野別に集計すると、以下の規模感になる。

内閣府分野(コード) 事業数 市町村 都道府県
モノづくり(19) 63事業 51市町村 26都道府県
エネルギー(16) 105事業 68市町村 28都道府県
環境保全(21) 192事業 159市町村 44都道府県
3分野 重複除去 283事業 227市町村

※ 内閣府25分野すべての事業数・市町村数・都道府県数の一覧は 業種別データ(25分野の全件集計) にまとめている。

※ 全数値は localgovs.net の独自集計(2026年4月時点)。各事業ページは モノづくり分野の事業一覧エネルギー分野の事業一覧環境保全分野の事業一覧 から確認できる。

防災物納の文脈では、「防災対策・復興支援」(132事業/全国分布)という分野も製造業の主戦場となる。当サイトの全事業データを「防災」キーワードで横串検索すると、計画概要や事業説明文に「防災」と含まれる事業が56件確認できた。BCPや災害協定とセットで物納する大塚商会型のスキームは、この56事業のいずれかに紐付けて稟議を組み立てられるだろう。