地方創生2.0とは、2025年(令和7年)6月13日に閣議決定された政府の新たな地方創生の基本方針です。今後10年を見据え、「強い」経済・「豊かな」生活環境・「新しい日本・楽しい日本」の3つを目指す姿に掲げ、官民連携の推進を中核に据えています。企業にとっては、CSRや事業戦略を国の政策の方向性に沿わせて設計し直す上流の機会となります。
この記事の要点
- 地方創生2.0は2025年6月13日に閣議決定。今後10年を対象とし、中間の5年で見直す枠組み(出典:内閣官房 新しい地方経済・生活環境創生本部)。
- 「目指す姿」は3要素、基本構想が示す基本姿勢・視点は「令和の日本列島改造」として6つに整理されている。
- 企業の関与は包括連携協定・人材/ノウハウ提供・関係人口づくり・寄附(資金面)の4方向で体系化できる。
- 企業版ふるさと納税は、企業が資金面で地方創生2.0に関与する一手段として位置づけられる。
地方創生2.0とは何か:閣議決定の位置づけ
地方創生2.0は、内閣官房「新しい地方経済・生活環境創生本部」が司令塔となり、2025年(令和7年)6月13日に閣議決定された「地方創生2.0基本構想」に基づく政策の総称です。基本構想は今後10年を対象とし、中間の5年で見直すこととされ、あわせて2025年中に具体的な総合戦略を策定する方針が示されています(出典:基本構想 本文(PDF)、概要(PDF))。
企業の地域連携担当者がまず押さえるべきは、これが単年度の補助金施策ではなく、10年スパンの構造的な方針だという点です。連携戦略やCSRの中期計画を、この政策のフレームに沿わせておくことで、自治体側との目線合わせがしやすくなります。
これまでの10年の反省点
基本構想は、これまで約10年の地方創生の反省として「地域のステークホルダーが一体となった取組の不足」を挙げています。裏を返せば、地方創生2.0は企業・大学・金融機関・住民といった多様な主体が一体で取り組むことを前提にしており、企業の参画余地がより明確に位置づけられた構想だと読めます。
現状認識と追い風:企業が読み解くべきマクロ環境
基本構想は現状認識として、人口減少と東京一極集中、地方の人手不足の進行、若者・女性の地方離れを挙げています。一方で、追い風となる変化としてインバウンドの増加、リモートワークの普及、AI・デジタルの進化を位置づけています(出典:概要(PDF))。
この「課題と追い風」の構図は、そのまま企業の事業機会の地図になります。たとえばリモートワークや関係人口は人材・採用戦略と、AI・デジタルは自社のDX知見の地域提供と、インバウンドは地域産品・観光関連事業と接続します。CSR文脈にとどめず、本業の戦略課題として捉えられる点が地方創生2.0の特徴です。
「目指す姿」3要素を企業戦略に翻訳する
基本構想が掲げる「目指す姿」は次の3要素です。それぞれを、企業が自社の言葉に翻訳するとどうなるかを併記します。
| 政府の「目指す姿」 | 政府資料の記述 | 企業側への翻訳(例) |
|---|---|---|
| 「強い」経済 | 自立的・持続的に成長する「稼げる」経済の創出 | 地域産品の高付加価値化・販路拡大への協業、サプライチェーンの地域共創 |
| 「豊かな」生活環境 | 生きがいを持って働き安心して暮らせる環境 | 地域の働く場づくり、健康・教育・防災分野での社会貢献 |
| 「新しい日本・楽しい日本」 | 若者や女性にも選ばれ、一人一人が幸せを実感できる地方/多様性の好循環 | 多様な人材が活躍できる職場づくり、ダイバーシティ施策と地域の連動 |
稟議資料を作る際は、自社の取組がこの3要素のどこに効くのかを明示すると、政策との整合性を社内外に説明しやすくなります。
定量目標の例(政府が掲げる水準)
基本構想は、目指す姿を裏づける定量目標の例として以下を挙げています。いずれも政府が掲げる目標値であり、企業活動の効果指標ではない点に注意してください(出典:基本構想 本文(PDF))。
- 就業者1人当たりの年間付加価値労働生産性を、東京圏と同水準にする
- 関係人口を実数1,000万人・延べ1億人創出する
- 地方への若者の流れを2倍にする
- 地域の買物環境の維持向上を図る市町村の割合を10割にする
- AI・デジタルで地域課題解決を図る市町村の割合を10割にする
これらは企業にとって、自社が貢献し得る具体的な「政策のゴール」を示すものです。とくに関係人口の創出やAI・デジタル活用は、企業の人材・技術が直接効きやすい領域です。
基本構想が示す6つの基本姿勢・視点「令和の日本列島改造」
基本構想(概要・本文PDF)は基本姿勢・視点を「令和の日本列島改造」として6つに整理しています。企業の関与の入口となる視点を太字で示します(出典:概要(PDF))。なお、首相官邸の地方創生2.0推進ページでは政策柱を別の切り口で整理しており、参照資料によって構成の見せ方が異なる点にご留意ください。
- 人口減少を正面から受け止め、民の力を最大限活かすべく官民連携をさらに推進する
- 若者や女性にも選ばれる地域(魅力ある職場づくり等)
- 人口減少下でも「稼げる」地方=地方イノベーション創生構想(地域資源の高付加価値化・地域産品の海外展開)
- AI・デジタル等の新技術の徹底活用(GX・DX、ワット・ビット連携)
- 都市と地方が互いに支え合い人材の好循環(関係人口を活かした連携・協働)
- 地方創生の好事例の普遍化と広域展開(広域リージョン連携、産官学金労言士による主体的取組)
注目すべきは、(1)の「官民連携の推進」、(5)の「関係人口を活かした連携・協働」、(6)の「広域リージョン連携・産官学金労言士」という3つの視点です。いずれも企業(=民、産)が主体的に関わることを前提にしており、地方創生2.0が企業の参画を構造的に織り込んでいることがわかります。「産官学金労言士」とは、産業界・行政・大学・金融・労働・言論・士業など多様な主体を指す表現で、企業がその一角として位置づけられています。
企業の関与を体系化する:4つの選択肢
上記の政府の方向性を踏まえると、企業が地方創生2.0に関与する手段は大きく4方向に整理できます。これは本サイトが政策の枠組みから導いた編集上の整理であり、自社の経営資源(ヒト・モノ・カネ・ノウハウ)のどれを出すかで選択します。
| 関与の方向 | 主な手段 | 対応する基本姿勢・視点 | 主に出す経営資源 |
|---|---|---|---|
| 連携の枠組みづくり | 包括連携協定の締結 | (1)官民連携の推進 | 組織・関係構築 |
| 人材・知見の提供 | 人材派遣、ノウハウ・技術(AI・DX等)の提供 | (4)新技術の活用 (2)職場づくり | ヒト・ノウハウ |
| 関係人口づくり | ワーケーション、副業・兼業人材、関係人口創出の取組 | (5)関係人口を活かした連携・協働 | ヒト・関係性 |
| 資金面での貢献 | 寄附(企業版ふるさと納税を含む) | (3)稼げる地方 (1)官民連携 | カネ |
包括連携協定:連携の入口を整える
包括連携協定は、企業と自治体が分野横断で協力することを定める一般的な枠組みです。法令で一律に定められた制度ではなく、防災・教育・産業振興・健康増進など複数分野を包括的にカバーする合意として広く活用されています。地方創生2.0の(1)「官民連携の推進」と最も直接的に対応する選択肢であり、その後の人材提供や寄附の土台になります。
人材・ノウハウの提供:本業の強みを地域へ
AI・デジタルの活用(視点4)や魅力ある職場づくり(視点2)は、企業が持つ専門人材や技術を地域に提供することで貢献できる領域です。人材派遣や技術支援は、本業の強みをそのまま社会価値に転換できるため、CSRと事業戦略を両立させやすい選択肢です。
関係人口づくり:都市と地方の人材好循環
視点(5)が掲げる「関係人口を活かした連携・協働」は、政府が実数1,000万人・延べ1億人という創出目標を掲げる重点領域です。企業は、社員の副業・兼業やワーケーション、地域プロジェクトへの参画を通じて、都市と地方の人材好循環の担い手になり得ます。
資金面での貢献:寄附という選択肢
連携の枠組みや人材だけでなく、資金面から地域の取組を支えることも企業の重要な関与です。一般の寄附に加え、地方創生の財源として制度設計された企業版ふるさと納税が代表的な手段となります。
企業版ふるさと納税:資金面で地方創生2.0に関与する一手段
企業版ふるさと納税(正式名称:地方創生応援税制)は、企業が国の認定した地方公共団体の地方創生プロジェクトに寄附を行った場合に、税制上の優遇措置を受けられる仕組みです。地方創生の文脈で設計された制度であり、企業が資金面で地方創生2.0に関与する一手段として位置づけられます。制度の詳細や対象事業、手続きは内閣府の企業版ふるさと納税ポータルサイトで確認できます。
地方創生2.0の視点に照らすと、企業版ふるさと納税は単なる資金提供にとどまりません。寄附を起点に包括連携協定や人材交流へ発展させれば、(1)官民連携・(3)稼げる地方・(5)関係人口といった複数の視点を束ねる入口にもなり得ます。
本サイトの関連ガイド
- 制度の基礎から学びたい方は 企業版ふるさと納税とは|基礎ガイド
- 寄附全体の選択肢を比較したい方は 企業の寄附ハンドブック
- 自社に合う関与方法を素早く知りたい方は AI診断(無料)
なお、税制上の効果や限度額は企業の状況により異なります。具体的な税務判断は、最新の制度内容を内閣府ポータルで確認のうえ、税理士など専門家とともに検討してください。本記事は制度の一般的な説明にとどめ、個別の税額試算は行いません。
役員稟議・連携戦略立案への落とし込み
地方創生2.0を社内の意思決定につなげる際は、次の順序で整理すると説明がしやすくなります。
- 政策との整合性を示す:自社の取組が「目指す姿」3要素と6つの基本姿勢・視点のどこに効くかを明記する。
- 出す経営資源を決める:連携の枠組み・人材/ノウハウ・関係人口・資金のどれを主軸にするかを選ぶ。
- 段階設計をする:包括連携協定や寄附を入口に、人材交流・関係人口づくりへ広げる中期の道筋を描く。
- 一次情報で裏づける:数値や政策の柱は首相官邸・内閣官房の資料に直接当たり、社内資料の信頼性を担保する。
地方創生2.0は10年スパンの構想です。単発の社会貢献ではなく、本業の強みを地域の課題に接続する中期戦略として設計することで、企業価値と地域価値の双方に資する取組になります。
よくある質問(FAQ)
Q. 地方創生2.0はいつ決定され、いつまでの計画ですか?
A. 2025年(令和7年)6月13日に「地方創生2.0基本構想」として閣議決定されました。今後10年を対象とし、中間の5年で見直すこととされています。あわせて2025年中に具体的な総合戦略を策定する方針が示されています(出典:内閣官房)。
Q. 地方創生2.0が掲げる「目指す姿」とは何ですか?
A. 「強い」経済(自立的・持続的に成長する「稼げる」経済の創出)、「豊かな」生活環境(生きがいを持って働き安心して暮らせる)、「新しい日本・楽しい日本」(若者や女性にも選ばれ、一人一人が幸せを実感できる地方/多様性の好循環)の3要素です。
Q. 企業はどのような形で地方創生2.0に関われますか?
A. 政府は官民連携の推進、関係人口を活かした連携・協働、広域リージョン連携や産官学金労言士による取組を打ち出しています。これを踏まえると、企業の関与は包括連携協定(連携の枠組み)、人材・ノウハウの提供、関係人口づくり、寄附(資金面)の4方向に整理できます。
Q. 企業版ふるさと納税は地方創生2.0とどう関係しますか?
A. 企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)は、企業が国の認定した地方公共団体の地方創生プロジェクトに寄附を行う仕組みで、企業が資金面で地方創生2.0に関与する一手段と位置づけられます。制度の詳細は内閣府の企業版ふるさと納税ポータルサイトで確認できます。
Q. 「産官学金労言士」とは何を指しますか?
A. 基本構想の6つの基本姿勢・視点のうち、好事例の普遍化と広域展開(広域リージョン連携)の文脈で示された表現で、産業界・行政・大学・金融・労働・言論・士業など多様な主体を指します。企業はその一角として、主体的な取組を期待される立場にあります。