関係人口とは、移住した「定住人口」でも、観光で訪れた「交流人口」でもない。地域や地域の人々と、多様な形で関わりを持つ人々を指す概念だ(出典:内閣府 関係人口の創出・拡大)。「観光以上、移住未満」と表現されるように、兼業・副業や祭り・イベント運営への参画といった、継続的で多面的な関わりが含まれる。企業にとっては、社員の地域参画を通じて、こうした関わりの担い手になる可能性を秘めた領域だ。
この記事の要点
- 関係人口は総務省が定義した用語で、「観光以上移住未満」=地域や地域の人々と多様に関わる人々を指す(出典:内閣府)。
- 関わり方は兼業・副業、祭り・イベント運営への参画、ファンベースの交流など、多様な形態がある。
- 地方創生2.0基本構想(2025年6月13日閣議決定)は関係人口を活かした連携・協働を掲げ、定量目標の例として実数1,000万人・延べ1億人の創出を示す。
- 可視化の仕組みとしてふるさと住民登録制度の創設方針が示されている。
- 企業は副業・兼業人材、ワーケーション、地域プロジェクト参画を通じて関与でき、企業版ふるさと納税も資金面での関与手段の一つ。
この記事は、ピラー記事 地方創生2.0と企業連携 のスポーク(関係人口と企業の関与)です。地域連携の入口を整理したい方は、まずハブ 企業の地域連携ハンドブック もあわせてご覧ください。
関係人口とは何か:総務省の定義
関係人口とは、その地域に移住した「定住人口」でも、観光で訪れる「交流人口」でもない。地域や地域の人々と、多様な形で関わりを持つ人々を指す概念だ。総務省がこの用語を定義し、「観光以上移住未満」と表現されることが一般的だ(出典:内閣府 関係人口の創出・拡大、総務省 関係人口・ふるさと住民)。
関わり方は千差万別。政府資料では、兼業・副業、祭り・イベント運営への参画、ファンベースの交流など、さまざまな関与の形が挙げられている。つまり、関係人口とは「住んでいるか否か」という二分法では捉えきれない。むしろ、関わりの深さがグラデーションのように広がる、多様な関係の総称だと理解するのが自然だろう。
定住人口・交流人口との違い
企業の地域連携担当者がまず押さえるべきは、関係人口が既存の二つの人口概念の「あいだ」に位置づけられている点だ。下表は政府資料の記述をもとに、三つの概念の違いを整理したものだ。
| 概念 | 位置づけ | 関わりの深さ |
|---|---|---|
| 定住人口 | その地域に移住・居住している人々 | 最も深い(生活の本拠) |
| 関係人口 | 移住でも観光でもなく、地域や地域の人々と多様に関わる人々(観光以上移住未満) | 継続的・多様な関わり |
| 交流人口 | 観光などで一時的に地域を訪れる人々 | 一時的・単発 |
企業が関与しやすいのは、まさにこの中間層だ。移住という大きな決断を迫られず、副業・兼業やプロジェクト参画といった形で、社員が継続的に地域と関わる余地がある。ハードルが低く、柔軟な関わり方が可能になる。
所管と政策上の位置づけ:どの府省が関わるか
関係人口は総務省が用語を定義し、内閣府・総務省・国土交通省など複数の府省の政策に取り入れられている。総務省は関係人口・ふるさと住民に関する情報を発信している(出典:総務省 関係人口・ふるさと住民)。
複数の府省が関わるということは、関係人口が横断的な政策テーマとして位置づけられている証だ。企業が自治体と連携する際も、防災・産業振興・移住定住など、複数の分野にまたがる可能性がある。そのため、入口を一つの部局に限定しすぎず、広く視野を持つ設計が有効だろう。
地方創生2.0での重点化:関係人口が政策の柱に
2025年(令和7年)6月13日に閣議決定された「地方創生2.0基本構想」(内閣官房)では、関係人口の位置づけがさらに明確になった。基本構想は、「都市と地方が互いに支え合い、人材の好循環」という視点のもと、関係人口を活かした連携・協働を掲げている(出典:地方創生2.0基本構想 概要(PDF))。
企業にとって重要なのは、関係人口が単なる地域活性化のスローガンではなく、10年スパンの国家方針の中で「人材の好循環」を担う具体的なテーマとして位置づけられた点だ。都市部に拠点を持つ企業の人材は、この好循環の供給源になり得る。
定量目標:実数1,000万人・延べ1億人
基本構想は、関係人口に関する定量目標の例として関係人口を実数1,000万人・延べ1億人創出することを示している(出典:地方創生2.0基本構想 概要(PDF))。これは政府が掲げる目標値であり、現時点の実数や民間調査の推計値ではない。本記事では、出所が政府資料で確認できる目標値のみを扱う。
この目標は、企業にとって「政策のゴール」を示すものだ。社員の地域参画やワーケーションを後押しすることは、結果として関係人口創出の裾野を広げる取組につながる。
ふるさと住民登録制度:関係人口を可視化する
基本構想は、関係人口を可視化する仕組みとしてふるさと住民登録制度の創設方針を示している(出典:地方創生2.0基本構想 概要(PDF)、総務省 関係人口・ふるさと住民)。これまで「観光以上移住未満」という曖昧さから把握が難しかった関わりを、登録という形で見える化しようという方向性だ。
制度の詳細な運用や対象は、今後の政府の発表に委ねられる。しかし、企業の地域連携担当者にとっては、自社の取組が関係人口づくりにどう寄与するかを、将来的により説明しやすくなる土台になるだろう。
企業はどう関与できるか:3つの入口
政府が示す関係人口の関わり方(兼業・副業、イベント運営への参画、ファンベースの交流)を踏まえると、企業が関与する入口は大きく次の3方向に整理できる。これは本サイトが政策の枠組みから導いた編集上の整理であり、自社の人材・事業の特性に応じて選択する。
| 関与の入口 | 具体的な取組 | 主に動く経営資源 |
|---|---|---|
| 副業・兼業人材としての地域参画 | 社員が副業・兼業で地域の事業や課題解決に関わる | ヒト・専門スキル |
| ワーケーション | 地域に滞在しながら働く機会を社員に提供する | ヒト・滞在による接点 |
| 地域プロジェクトへの参画 | 祭り・イベント運営や地域プロジェクトに企業・社員として参加する | ヒト・関係性・ノウハウ |
副業・兼業人材としての地域参画
政府資料は、関係人口の関わり方の一つとして兼業・副業を明示している。社員が本業を持ちながら地域の事業に専門スキルを提供する形は、企業にとって人材育成と社会貢献を両立させやすい入口だ。移住を伴わないため、社員側のハードルが低く、継続的な関わりに発展しやすい。
ワーケーション
ワーケーションは、地域に滞在しながら働くことで、社員と地域とのあいだに継続的な接点を生む。一度の滞在が地域への愛着につながり、その後の副業・兼業やプロジェクト参画へと発展する起点になる。人事・働き方改革の文脈とも接続しやすく、CSRと制度設計の両面から検討できる。
地域プロジェクトへの参画
祭り・イベント運営への参画は、政府資料が示す関係人口の典型的な関わり方の一つだ。企業が組織として地域プロジェクトに参加すれば、社員個人の関わりにとどまらず、企業ブランドと地域との関係を中長期で築くことができる。地域連携協定や本業の知見提供と組み合わせることで、関わりの厚みが増す。
企業版ふるさと納税:資金面から関係人口づくりを支える
企業の関与は人材の提供だけではない。資金面から地域の取組を支えることも、関係人口づくりや都市と地方の連携を後押しする重要な手段だ。その代表的な制度が企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)だ。企業が国の認定した地方公共団体の地方創生プロジェクトに寄附を行った場合、税制上の優遇措置を受けられる仕組みで、制度の詳細や対象事業は内閣府の企業版ふるさと納税ポータルサイトで確認できる。
関係人口の文脈で見ると、企業版ふるさと納税は単なる資金提供にとどまらない。寄附を起点に、社員の副業・兼業やワーケーション、地域プロジェクトへの参画へと発展させれば、「資金」と「人材」の両面から都市と地方の人材好循環に関わることができる。資金面の関与を入口に、関係人口づくりへと広げる設計が有効だ。
本サイトの関連ガイド
- 地方創生2.0と企業連携の全体像は 地方創生2.0と企業連携(ピラー)
- 地域連携の入口を一覧で見たい方は 企業の地域連携ハンドブック(ハブ)
- 制度の基礎から学びたい方は 企業版ふるさと納税とは|基礎ガイド
- 自社に合う関与方法を素早く知りたい方は AI診断(無料)
なお、税制上の効果や限度額は企業の状況により異なります。具体的な税務判断は、最新の制度内容を内閣府ポータルで確認のうえ、税理士など専門家とともに検討してください。本記事は制度の一般的な説明にとどめ、個別の税額試算は行いません。
役員稟議・連携企画への落とし込み
関係人口への関与を社内の意思決定に結びつける際には、以下の順序で整理すると説明がスムーズになります。
- 自社の取組が地方創生2.0の「関係人口を活かした連携・協働」(都市と地方の人材好循環)にどう貢献するかを明確にします。
- 副業・兼業人材、ワーケーション、地域プロジェクト参画、資金面(企業版ふるさと納税)のいずれを主軸にするかを決めます。
- 単発の取り組みにとどまらず、ワーケーションや寄附を入口に、継続的な関わりへとつなげる中期の道筋を描きましょう。
- 定義や目標値については、内閣府・総務省・内閣官房(基本構想 概要)の資料を直接参照し、社内資料の信頼性を確保します。
関係人口は、移住という大きな決断を必要とせず、企業が地域と関われる入り口として適しています。社員の関わりを後押しし、必要に応じて資金面でも支援することで、企業価値と地域価値の両方を高める取り組みが可能です。
よくある質問(FAQ)
Q. 関係人口とは何ですか?
A. 移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない。地域や地域の人々と多様に関わる人々を指す概念です。「観光以上移住未満」と表現され、兼業・副業や祭り・イベント運営への参画、ファンベースの交流など、関わり方はさまざまです。この用語は総務省が定義しています(出典:内閣府・総務省)。
Q. 関係人口と交流人口・定住人口はどう違いますか?
A. 定住人口はその地域に移住・居住している人々。交流人口は観光などで一時的に訪れる人々。関係人口は、その中間に位置し、移住でも観光でもない形で、地域や地域の人々と継続的・多様に関わる人々を指します。
Q. 地方創生2.0で関係人口はどう位置づけられていますか?
A. 2025年6月13日に閣議決定された地方創生2.0基本構想(内閣官房)では、「都市と地方が互いに支え合い、人材の好循環」という視点から、関係人口を活かした連携・協働が掲げられています。定量目標として、関係人口を実数1,000万人・延べ1億人創出することが示され、可視化の仕組みとしてふるさと住民登録制度の創設方針も明記されています。
Q. ふるさと住民登録制度とは何ですか?
A. 地方創生2.0基本構想で創設方針が示された、関係人口を可視化するための仕組みです。「観光以上移住未満」という把握が難しい関わりを、登録という形で見える化しようとするものです。詳細な運用や対象は、今後の政府の発表に委ねられます(出典:内閣官房・総務省)。
Q. 企業は関係人口づくりにどう関われますか?
A. 政府は兼業・副業やイベント運営への参画を、関係人口の関わり方の一つとして挙げています。企業としては、社員の副業・兼業人材としての地域参画、ワーケーション、地域プロジェクトへの参画といった入口から関与できます。また、企業版ふるさと納税を通じて資金面から地域の取組を支えることも、有効な手段の一つです。