企業版ふるさと納税を活用した優良事例を表彰する「大臣表彰」制度。平成30年度(2018年)の第1回から毎年実施されており、地方公共団体部門と企業部門の両方で受賞者が選ばれます。この記事では、全年度の受賞自治体・企業を一覧でまとめます。
大臣表彰の概要
- 主催: 内閣府(地方創生担当大臣)
- 開始: 平成30年度(2018年)第1回
- 部門: 地方公共団体部門・企業部門
- 目的: 企業版ふるさと納税を活用した優良事例を表彰し、制度の普及・活用促進を図る
- 実績: 第1回〜第8回で計27自治体・23企業が受賞
本記事は内閣府公表PDF(企業版ふるさと納税に係る大臣表彰|地方創生推進事務局)の各年度資料を一次情報として、事業名・連携企業・寄附額を確認のうえ整理しています。
受賞者一覧(全年度サマリー)
| 年度(回) | 自治体部門 | 企業部門 |
|---|---|---|
| 令和7年度(第8回) | 伊豆市、豊田市、四日市市、日南町 | アサヒビール、寿精版印刷、ジー・オー・ピー |
| 令和6年度(第7回) | 札幌市、弘前市、秋田市、江津市 | エア・ウォーター北海道、トリドールHD、龍角散 |
| 令和5年度(第6回) | 南幌町、紫波町、平塚市、都留市、曽於市 | 大塚商会、資生堂ジャパン、三菱UFJ銀行 |
| 令和4年度(第5回) | 大樹町、姫路市、神山町 | 第一生命保険、野村アセットマネジメント、リコージャパン |
| 令和3年度(第4回) | 能登町、真庭市、日高村、大崎町 | アステリア、信金中央金庫、ヤフー |
| 令和2年度(第3回) | 深谷市、飛騨市、瀬戸内市 | 鹿児島銀行、株式会社ホクリク |
| 令和元年度(第2回) | 境町、下仁田町 | 小松マテーレ、ディスコ、長谷工コーポレーション |
| 平成30年度(第1回) | 岐阜県・各務原市、玉野市 | ニトリHD、アルビオン、三井E&SHD |
令和7年度(第8回)受賞事例
2025年12月19日に受賞者が決定。4自治体・3企業が表彰されました。
静岡県伊豆市:XR技術を活用した防災教育
慶應義塾大学SFCと連携し、XR(拡張現実)技術を活用した防災教育プログラムを展開。最先端のテクノロジーを地方の防災教育に実装した先進的な取り組みとして評価されました。
愛知県豊田市:超小型EVによる高齢者移動支援
「里モビニティ」と呼ばれる超小型EVを活用し、中山間地域の高齢者の移動を支援する事業。産学官連携で地域の交通課題に取り組んでいます。
三重県四日市市:路線バスのEV化
ゼロカーボンシティの実現に向けて、路線バスのEV化を推進。石油精製の街が環境転換に挑む取り組みとして注目されています。
鳥取県日南町:森林保全とCO2削減
伐採・再造林のサイクルによるCO2削減と、企業社員のボランティア受け入れを組み合わせた森林保全事業。企業との多面的な連携が評価されました。
令和6年度(第7回)受賞事例
4自治体・3企業が受賞。DX、食文化、映画制作など多彩な分野の事例が選ばれました。
北海道札幌市:障がい者DX人材リスキリング
トランスコスモスと連携し、障がい者のDX人材へのリスキリング事業を展開。社会的包摂とデジタル化を両立する先進事例です。
青森県弘前市:りんご収穫ボランティアツアー
ニッカウヰスキー・アサヒビールとの連携で、りんご収穫のボランティアツアーを実施。企業の社員研修と農業人材不足の解消を両立した取り組みです。
秋田県秋田市:映画制作プロジェクト
映画制作を通じた地域の魅力発信と文化振興に取り組む事業。地方創生×コンテンツ産業の新しいモデルとして注目されています。
島根県江津市:テレビ東京連携・菰沢公園と波子駅のリブランディング
首都圏メディア(テレビ東京「田村淳のTaMaRiBa」)と連携し、市内2施設のリブランディングを実施。「菰沢(こもさわ)公園」を目的地としての魅力強化を図り、JR山陰本線「波子(はし)駅」の無人駅活用としてクラフトビール醸造施設を誘致しました。本事業への寄附累計は6,850万円。大手メディアと連携することで、寄附企業との信頼関係構築の迅速化や新規寄附企業との出会い創出につながっている点が評価され、山陰地方の自治体として初の受賞となりました(出典: 内閣府 第7回(令和6年度)受賞者取組概要 PDF)。
令和5年度(第6回)受賞事例
5自治体・3企業が受賞。教育、スポーツ、エネルギー、畜産など幅広い分野の事例が選ばれました。
北海道南幌町:子ども室内遊戯施設「はれっぱ」整備
寄附額約2,030万円を活用し、子どもの室内遊戯施設を整備。人口約8,000人の小さな町が子育て環境の充実に取り組んだ事例です。
岩手県紫波町:バレーボールリーグによる地域活性化
プロバレーボールリーグの開催を核とした地域活性化事業。スポーツを通じた交流人口拡大の好事例として評価されました。
神奈川県平塚市:波力発電関連産業の創出
海洋エネルギーを活用した波力発電の産業化に取り組む事業。寄附額約5,500万円でエネルギー分野のイノベーション創出を推進しています。
山梨県都留市:「探究型」教育プログラム
子どもたちの課題発見力・解決力を育てる探究型教育プログラムを創出。教育×地方創生の新しいアプローチです。
鹿児島県曽於市:南九州畜産獣医学拠点の整備
寄附額約2億325万円を活用し、畜産分野の獣医学拠点を整備。大規模な寄附を集めて地域の基幹産業を強化した事例です。
令和4年度(第5回)受賞事例
3自治体・3企業が受賞。宇宙産業、農業テック、まちづくりなど独自性の高い事業が評価されました。
北海道大樹町:宇宙版シリコンバレーの形成
「北海道スペースポート」プロジェクトとして、令和4年度には77社から約14億1,435万円もの寄附を集めました。宇宙産業の集積地を目指す壮大な取り組みです。
兵庫県姫路市:アグリテックによる地域活性化
農業用ロボットを活用した小学生親子向け栽培体験、障害者への農業体験機会の提供、「アグリテック甲子園」の開催など、農業×テクノロジーの多面的な展開が評価されました。
徳島県神山町:外部団体と連携したまちづくり
サテライトオフィスの先進地として知られる神山町。外部団体が中心となった寄附募集活動と、「まちづくり」そのものに対する寄附を集める独自のアプローチが特徴です。
令和3年度(第4回)受賞事例
4自治体・3企業が受賞。関係人口の創出、林業DX、リサイクルなど地域の強みを活かした事業が選ばれました。
石川県能登町:能登の暮らしを受け継ぐ関係人口創出事業
町と興能信用金庫・北陸財務局の三者が対話を重ねて事業を企画。地域金融機関が中心となり、ワーケーションやサテライトオフィス機能を兼ねたテレワーク施設「NOTO CROSS PORT」を整備し、都市部の副業人材と町内事業者のマッチングを推進しました。総事業費8,530万円のうち本事業への寄附累計は1,000万円(寄附企業: 信金中央金庫)。地域信金が事務局となり町内副業人材活用ネットワークを構築した、官民金融三者連携モデルとして評価されました(出典: 内閣府 第4回(令和3年度)取組事例集 PDF)。
岡山県真庭市:CLT材の再利用と人材派遣型の活用
東京オリンピック会場(晴海)に使われたCLT材(真庭市産)を解体後に蒜山に移設し、観光・文化施設「GREENable HIRUZEN」として再利用。また、両備ホールディングスからの人材派遣型による観光人材の活用でも成果を上げました。
高知県日高村:ICT推進事業&村まるごとデジタル化事業
令和3年5月に「日本ではじめてのスマホ普及率100%」を目指す宣言を行い、KDDI株式会社・株式会社チェンジ・高知県立大学等と包括連携協定を締結。役場職員や住民のICTリテラシー向上を目的とした講習会、防災・健康・地域通貨アプリの導入を進めました。総事業費2億1,710万円のうち本事業への寄附累計は1億4,310万円(寄附企業: 株式会社VSN(現Modis株式会社) ほか)。デジタルディバイド解消とSociety5.0の地域実装を結びつけた事業設計が評価されました(出典: 内閣府 第4回(令和3年度)取組事例集 PDF)。
鹿児島県大崎町:リサイクル率日本一のまちづくり
12年連続リサイクル率日本一の実績を持つ大崎町。環境分野の取り組みと企業版ふるさと納税の活用が高く評価されました。
令和2年度(第3回)受賞事例
3自治体・2企業が受賞しました。
埼玉県深谷市:郷土の偉人 渋沢栄一翁顕彰・継承プロジェクト
新一万円札の顔として知られる渋沢栄一の出身地・深谷市が、その偉業や精神を後世に継承する事業を企画。令和2年度に全国13社の企業から5,540万円の寄附を受けました。全国約600の取組のうち特に顕著な功績を上げた3団体の1つとして、埼玉県内で初の受賞となった事例です(出典: 深谷市公式サイト)。
岐阜県飛騨市:飛騨神岡宇宙最先端科学パーク構想(ひだ宇宙科学館カミオカラボ整備事業)
ノーベル物理学賞ゆかりの神岡(カミオカンデ)の研究を体験できる「ひだ宇宙科学館 カミオカラボ」を整備するため、企業版ふるさと納税で17社から1億4,860万円を集め、施設建設費の約半分を企業寄附で賄いました。最先端宇宙物理学を地域ブランディングに転化したアプローチが評価され、開館初年度には13万人が来館しています(出典: 飛騨市公式サイト ひだ宇宙科学館カミオカラボ寄附ページ)。
岡山県瀬戸内市:山鳥毛里帰りプロジェクト
備前刀の最高峰・国宝「太刀 無銘 一文字(山鳥毛)」(評価額5億円)を生まれ故郷の備前長船の地に取得・里帰りさせるプロジェクト。企業版ふるさと納税では147社から3億1,201万円を集めました(個人ふるさと納税分も含めた寄附総額は8億8,095万円で、控除後手元残額6億4,401万円)。国宝の取得という前例の少ないテーマで企業寄附を集めた点が評価されました(参考: 瀬戸内市 山鳥毛里帰りプロジェクト)。
令和元年度(第2回)受賞事例
2自治体・3企業が受賞しました。
茨城県境町
自動運転バスの導入など先進的なまちづくりで知られる境町。企業との積極的な連携が評価されました。
群馬県下仁田町:ねぎとこんにゃく下仁田奨学金事業
町外進学者のUターンを促すため、在学中は無利子、卒業後に町内に定住すれば返還が全額免除される奨学金制度を企業版ふるさと納税で支える事業。令和元年度の寄附企業はプライムプラン株式会社・株式会社高崎測量・クオリティー・サービス合資会社・技研コンサル株式会社・エスエヌ環境テクノロジー株式会社など、地元・縁故企業が中心。地域人材の流出抑止というローカルなテーマで継続寄附の枠組みを構築した点が評価されました(出典: 下仁田町 寄附企業一覧)。
平成30年度(第1回)受賞事例
記念すべき第1回は、2自治体(共同応募含む)・3企業が受賞しました。
岐阜県・岐阜県各務原市
県と市が共同で応募した事例。自治体間の連携による地方創生の先行モデルとして評価されました。
岡山県玉野市
地域の課題解決に向けた企業との連携事業が評価され、第1回の受賞自治体に選ばれました。
受賞事例の傾向
8年間の受賞事例を分析すると、以下のような傾向が見えてきます。
分野別の傾向
- 環境・エネルギー: EV化、波力発電、森林保全、カーボンニュートラル — 近年増加傾向
- DX・テクノロジー: XR防災教育、アグリテック、DX人材育成 — デジタル系の事例が急増
- 教育・人材育成: 探究型教育、リスキリング、子ども施設整備
- 産業振興: 宇宙産業、畜産獣医学、スポーツ産業
- まちづくり・移住定住: 自動運転バス、サテライトオフィス、関係人口
受賞自治体の特徴
- 人口規模はさまざま — 札幌市(197万人)から南幌町(約8,000人)まで
- 北海道の自治体が多い(大樹町、南幌町、札幌市など)
- 独自性のある事業テーマが評価される傾向
受賞企業の特徴
- 大企業が多いが、地方の金融機関や中堅企業も受賞
- 金銭寄附だけでなく、人材派遣型の活用も評価対象
- 複数自治体への継続的な寄附が評価される傾向
- 受賞企業以外の参加企業も含めた網羅的なリストは、業種別事例集(IT・製造・建設・金融・流通など8業種28事例)で確認できます
大臣表彰を目指すには
大臣表彰は、企業と自治体双方の取り組みが評価されます。表彰を目指す際のポイントをまとめます。
自治体向けのポイント
- 独自性: 他にない事業テーマや地域資源の活用
- 成果の見える化: 寄附金の使途と具体的な成果を明確に
- 企業との関係構築: 金銭寄附にとどまらない多面的な連携
- 継続性: 単年度ではなく複数年度の取り組み
企業向けのポイント
- 自社の強みの活用: 本業の知見や人材を地域課題に活かす
- 複数自治体への展開: 1自治体への寄附から、ノウハウを横展開
- 人材派遣型の活用: 金銭+人材の両面で地域に貢献
- 長期的な視点: 短期的な税軽減だけでなく、地域との共創
まとめ
企業版ふるさと納税の大臣表彰は、制度を活用した模範的な取り組みが評価される制度です。環境・DX・教育など社会的意義の高いテーマが選ばれる傾向にあります。寄附を検討されている企業にとっては、過去の受賞事例が「どのような寄附が社会的に評価されるか」の参考になるでしょう。まずは活用事例ハブ(業種別28事例)で他社の寄附パターンを把握し、その上で事業一覧から気になる事業を探してみてください。
受賞テーマ別 CSR担当者向けガイド
大臣表彰の受賞事例は、CSR担当者が寄附先を選ぶ際の参考になります。受賞分野に対応した実務ガイドを用意しています。
- 環境・脱炭素(EV路線バス、森林保全、波力発電など): 企業版ふるさと納税×気候変動・脱炭素 完全ガイド
- 生物多様性・自然保護(森林保全、里山再生など): 企業版ふるさと納税×生物多様性・ネイチャーポジティブ 完全ガイド
- 教育・人材育成(探究型教育、リスキリング、子ども施設整備など): 企業版ふるさと納税×教育・こども 完全ガイド
- 農業・産業振興(アグリテック、畜産獣医学拠点など): 企業版ふるさと納税×農業 完全ガイド
- 防災・XR技術(XR防災教育、地域レジリエンスなど): 企業版ふるさと納税×防災・復興 完全ガイド