企業版ふるさと納税に興味はあるけれど、「具体的にどう進めればいいかわからない」という企業担当者の方は少なくありません。この記事では、寄附先の検討から税額控除の申告まで、実務で必要な手続きをステップごとに解説します。
手続きの全体像(5ステップ)
| ステップ | 内容 | 目安期間 |
|---|---|---|
| STEP 1 | 寄附先の自治体・事業を探す | 1〜4週間 |
| STEP 2 | 自治体に寄附の申出をする | 1〜2週間 |
| STEP 3 | 寄附を実行する | 1〜2週間 |
| STEP 4 | 税額控除の申告をする | 決算後2ヶ月以内 |
| STEP 5 | 寄附後のフォローアップ | 継続的 |
※ 全体で検討開始から控除申告完了まで、おおむね2〜3ヶ月が目安です。
STEP 1: 寄附先の自治体・事業を探す
まずは自社の経営方針やCSR戦略に合った寄附先を見つけるところから始まります。寄附先を探す方法はいくつかあります。
当サイトで探す
当サイトでは、内閣府が認定した全国すべての企業版ふるさと納税対象事業を掲載しています。以下の切り口で探すことができます。
自治体に直接問い合わせる
すでに関係のある自治体や、事業拠点がある地域の自治体に直接連絡する方法もあります。各事業ページに記載されている担当部署・電話番号から問い合わせが可能です。
マッチングイベントを活用する
内閣府や地方公共団体が主催するマッチングイベントでは、寄附を募集している自治体と企業が直接対話できます。内閣府のポータルサイトで最新のイベント情報が公開されています。
ポイント: 本社所在地の自治体には寄附できません(制度上の制限)。寄附先を検討する際は、この点に留意してください。
実際の企業がどのような自治体・事業を選んでいるかは企業版ふるさと納税の活用事例も参考になります。業種別の選定傾向や大臣表彰事例を掲載しています。
STEP 2: 自治体に寄附の申出をする
寄附先が決まったら、自治体の担当部署に連絡し、寄附の意向を伝えます。
事前相談のポイント
寄附を申し出る前に、以下の点を自治体と確認しておくとスムーズです。
- 寄附の対象事業: どの認定事業に寄附するか
- 寄附金額: 控除上限額の範囲内か(控除上限額の計算方法を参照)
- 寄附の時期: 自社の決算期との兼ね合い
- 寄附の方法: 現金振込か、物品による寄附か
寄附申出書の提出
自治体から寄附申出書の様式を受け取り、必要事項を記入して提出します。申出書の様式は自治体ごとに異なりますが、一般的に以下の情報が必要です。
| 記入項目 | 内容 |
|---|---|
| 法人名・所在地 | 登記上の正式名称と本店所在地 |
| 代表者名 | 代表取締役等の氏名 |
| 寄附金額 | 10万円以上(1回あたり) |
| 寄附対象事業 | 地域再生計画に基づく事業名 |
| 担当者連絡先 | 実務担当者の氏名・電話・メール |
STEP 3: 寄附を実行する
自治体との合意ができたら、実際に寄附を行います。
払込方法
寄附金の払込方法は主に以下の3つです。
- 銀行振込: 最も一般的。自治体が指定する口座に振り込む
- 現金: 自治体窓口に直接持参
- 物品: 自社の製品・サービスを寄附(詳しくはこちら)
寄附金受領証明書の受取
寄附が完了すると、自治体から「寄附金受領証明書」が発行されます。この証明書は税額控除の申告時に必要となるため、大切に保管してください。
注意: 寄附の時期は自社の事業年度(決算期)に合わせて計画しましょう。税額控除はその寄附を行った事業年度の法人税申告で適用されます。3月決算の企業であれば、3月末までに寄附を実行する必要があります。
💡 自社の寄附額で試算するなら:所得額と寄附額を入力するだけで税額控除・実質負担が即座に出ます → 寄附額シミュレーター 2026年版
STEP 4: 税額控除の申告をする
寄附を行った事業年度の法人税確定申告の際に、税額控除の申告を行います。ここが企業版ふるさと納税の税メリットを受けるための重要なステップです。
税額控除の仕組み
企業版ふるさと納税では、寄附額に対して最大約9割の税軽減効果があります。内訳は以下の通りです。
| 控除の種類 | 控除割合 | 上限 |
|---|---|---|
| 損金算入(法人税等) | 約3割 | - |
| 法人住民税の税額控除 | 寄附額の4割 | 法人住民税法人税割額の20% |
| 法人税の税額控除 | 寄附額の1割 | 法人税額の5% |
| 法人事業税の税額控除 | 寄附額の2割 | 法人事業税額の20% |
具体的な控除額はシミュレーターで試算できます。
申告時に必要な書類
| 書類 | 発行元 | 備考 |
|---|---|---|
| 寄附金受領証明書 | 寄附先の自治体 | STEP 3で受領したもの |
| 地域再生計画の認定書の写し | 寄附先の自治体 | 自治体に依頼して入手 |
| 法人税確定申告書(別表) | 自社で作成 | 別表六(二十四)を使用(後述) |
| 地方税申告書 | 自社で作成 | 都道府県・市区町村に提出 |
法人税申告書の別表番号
税額控除を申告する際に使用する主な別表・様式は以下のとおりです(令和7年度税制改正後)。
| 控除の種類 | 申告書の様式 | 提出先 |
|---|---|---|
| 法人税 税額控除 | 別表六(二十四)「認定地方公共団体の寄附活用事業に関連する寄附をした場合の法人税額の特別控除に関する明細書」 | 所轄税務署 |
| 法人住民税(都道府県分)税額控除 | 第六号の三様式(道府県民税申告書)の該当控除欄 | 都道府県税事務所 |
| 法人住民税(市区町村分)税額控除 | 第二十号の三様式(市民税申告書)の該当控除欄 | 市区町村 |
| 法人事業税 税額控除 | 第六号様式(事業税申告書)の該当控除欄 | 都道府県税事務所 |
出典: 内閣府 令和7年度 企業版ふるさと納税 税制改正の解説(PDF)
ポイント: 申告手続きは税理士や会計事務所に相談されることをおすすめします。特に初めての寄附の場合、別表六(二十四)の記載方法や各税額の控除限度額の計算について専門家の助言を受けると安心です。各別表のフィールドごとの書き方・記載例は別表の書き方・記載例ガイドで、仕訳・勘定科目などの会計処理は会計処理・仕訳ガイドで詳しく解説しています。財務部門に「いつ振り込むか」「利益は減るか」「9割はどこから戻るか」を説明するための資料は財務部門への説明ガイドにまとめています。
STEP 5: 寄附後のフォローアップ
寄附は一度きりで終わりではありません。継続的な関わりが双方にとってメリットになります。
事業の進捗確認
寄附先の自治体から事業の進捗報告を受けることができます。寄附金がどのように使われ、どのような成果が出ているかを確認することで、自社のCSRレポートやIR資料にも活用できます。
継続寄附のメリット
- 自治体との信頼関係が深まり、より密接な連携が可能に
- 複数年にわたる事業を安定的にサポートできる
- 企業名の公表による地域でのブランド向上
大臣表彰を目指す
企業版ふるさと納税の活用が優れた事例として認められると、内閣府から大臣表彰を受けることがあります。平成30年度から毎年実施されており、企業と自治体双方が表彰されます。詳しくは活用事例の記事をご覧ください。
よくある質問
Q: 本社所在地の自治体に寄附できますか?
いいえ、できません。企業版ふるさと納税では、本社(主たる事務所)が所在する自治体への寄附は対象外です。これは、実質的な税収の移転を目的とした制度であるためです。
Q: 最低寄附額はありますか?
はい、1回あたり10万円以上が要件です。10万円未満の寄附は企業版ふるさと納税の対象になりません。
Q: 見返り(返礼品など)はもらえますか?
もらえません。企業版ふるさと納税では、寄附の代償としての経済的利益の供与が禁止されています。補助金の交付、入札での便宜、低利融資なども対象外です。詳しくは禁止されていることの記事をご覧ください。
Q: 制度はいつまでですか?
企業版ふるさと納税は令和9年度(2028年3月末)までの延長が決定しています。寄附を検討されている企業は、この期間内に活用を進めることをおすすめします。制度の沿革や今後の見通しはいつまで?期限延長ガイドで詳しく解説しています。
Q: 社員を派遣する形でも寄附できますか?
はい、「人材派遣型」と呼ばれる制度があります。社員の人件費を寄附金として扱い、地方自治体の事業に人材を派遣することができます。詳しくは人材派遣型の完全ガイドをご覧ください。