この動画は、研究者エイミー・エドモンドソンが「心理的安全性」という概念にたどり着いた経緯を語るTEDxトークです。彼女が病院チームの研究に携わる中で、予想外の結果に直面します。優れたチームほどミスが多い——その現象に気づき、彼女は「ミスを多く犯すのではなく、ミスを率直に話し合えるからこそ、その数が目立つのでは?」という仮説を立てます。動画は Building a psychologically safe workplace|Amy Edmondson|TEDx で視聴できます。
この記事は、海外のTEDxトーク(登壇者個人の見解・経験)の要点を日本語でまとめた紹介記事であり、査読された学術論文そのものではありません。エドモンドソン氏が動画内で語った内容に沿って再構成しています。心理的安全性に関する研究エビデンスを体系的に知りたい方は、当サイトの研究記事 心理的安全性とチームパフォーマンスの研究エビデンス をあわせてご覧ください。
心理的安全性とは何か(動画での定義)
エドモンドソン氏は、職場には朝起きてから、「学びのための対人的なリスクを取る用意がある」という状態で出社できる、特別な場所があると語ります。彼女は、こうした職場を「心理的安全性がある」と呼びます。
動画の中で、彼女は心理的安全性をこう定義しています。「懸念や疑問、アイデア、ミスについて声を上げることが、まったく問題なく、むしろ期待されている」という信念。つまり、率直に発言しても大丈夫だとメンバーが信じられる状態——それが彼女の説明する本質です。
なぜこの研究を始めたのか
エドモンドソン氏は、この概念に「まったくの偶然から」関心を持つようになったと述べています。彼女が関わったのは、医師と看護師から成るチーム。彼らの仕事は、いくつかの現代的な三次医療機関(tertiary care hospital)で、人為的な投薬エラー(medication errors)の実際の発生率を、できれば決定的なかたちで明らかにすることでした。
彼女自身が担当したのは、とてもシンプルな問いでした。「より優れた病院の患者ケアチームは、より少ないミスしか犯さないのか?」
どのようにデータを集めたのか
チームの有効性を測るため、エドモンドソン氏は標準的なチーム調査(team survey)の尺度を使いました。訓練を受けた看護師の調査員たちが、2つの病院の複数の部署(ユニット)を、6か月にわたって数日おきに訪問し、データを収集しました。
収集された有害事象、すなわち人為的なミスと判断された投薬エラーは、「患者1,000日あたりのエラー数(errors per thousand patient days)」という形で表されました。
なぜ「想定外の結果」だったのか
チームのデータとエラーのデータを分析した結果、エドモンドソン氏は「自分の予想とは正反対だった」と振り返ります。一見すると、優れたチームのほうがミスが「少ない」のではなく、「多い」ように見えたのです。
若手研究者として論文を発表したい立場からすれば、これは大きな課題でした。しかし彼女は、それを単なる問題ではなく、「パズル」として捉え直しました。
どんな仮説にたどり着いたのか
なぜこうした結果になったのかを検討する中で、医師と看護師の連携、チームワーク、声を上げること、ダブルチェックの必要性——これらの要素に思いを巡らせました。そして、ある「当たり前のことに目がくらむような閃き」が、彼女を仮説へと導きました。
彼女が動画内で語った仮説は、こうです。優れたチームはミスを多く犯しているのではなく、ミスについてより進んで話し合っているのでは? そのようなチームには、ミスを報告し、根本原因まで突き止めることを可能にする「率直さの風土(climate of openness)」があるのでは、と。
彼女自身も「その洞察を得ることと、それを証明することは、まったくの別物だった」と述べており、この時点ではあくまで仮説として語っています。
仮説をどう確かめようとしたのか
この仮説を検証するために、エドモンドソン氏は先入観を持たない若手の研究助手を各ユニットの観察に送り出しました。その助手は、エラー率も、チーム調査のスコアも、そして彼女の仮説さえも知らされていません。
彼女によれば、この助手は8つのユニットで「ミスについて話す意思や能力があるか」に大きな差を見いだしました。中には、ミスについて常に活発に話し合い、改善策を一緒に模索しているユニットもあったといいます。彼女は、こうした状態を「のちに」心理的安全性と呼ぶことにしたと述べています。
また、このグラフの並び順について補足します。一見するとエラー率の高い順に並んでいるように見えますが、実際は研究助手が評価した「風土の率直さ」の高い順に並んでおり、その相関は非常に高かったと語っています。
このトークから人事・総務担当が読み取れること
エドモンドソン氏が示しているのは、「ミスの報告数が少ない=良いチーム」とは限らない、という視点です。彼女の経験からすれば、報告が少ない職場は、ミスが本当に少ないのか、それとも声を上げにくいだけなのか——表面の数値だけでは、区別がつきません。
ここで重要なのは、これは登壇者個人の経験と見解に基づく語りであり、一般化された結論ではないということです。自社のチームに当てはめる際には、報告数の多寡だけで評価せず、メンバーが懸念や失敗を率直に話せる風土があるかどうか——その問いを意識することが示唆されています。心理的安全性に関する研究上の知見を確認したい場合は、当サイトの 心理的安全性とチームパフォーマンスの研究エビデンス を参照してください。
従業員の健康・働きやすさへの投資という視点
率直に話せる職場づくりは、広く見れば従業員の働きやすさやウェルビーイングへの投資の一部です。こうした投資をどう評価するかについては、当サイトのピラー記事 従業員ウェルビーイング投資のROIエビデンス や、健康関連のハブページ 企業の健康投資に関する記事一覧 もあわせてご覧ください。
そして、従業員や組織への投資から一歩進んで、企業として地域社会に貢献したいと考える場合、選択肢のひとつが企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)です。自治体の地域づくりを資金面で支援しながら税制上の優遇を受けられる仕組みについては 企業版ふるさと納税とは(基礎解説) で解説しています。自社に合った貢献先を探したい方は AI診断 もご利用ください。
よくある質問(FAQ)
心理的安全性とは、この動画ではどう定義されていますか?
エドモンドソン氏は、心理的安全性を「懸念や疑問、アイデア、ミスについて声を上げることが、まったく問題なく、むしろ期待されているという信念」だと動画内で定義しています。
エドモンドソン氏が当初立てた問いは何でしたか?
「より優れた病院の患者ケアチームは、より少ないミスしか犯さないのか?」という問いでした。彼女はこの問いに答えるためにチームの有効性とエラーのデータを集めたと語っています。
研究の結果はどうでしたか?
分析の結果は彼女の予想とは正反対で、一見すると優れたチームのほうがミスが多いように見えた、と動画で述べています。彼女はこれを問題ではなく「パズル」として捉え直したと語ります。
その「逆説的な結果」をどう解釈したのですか?
優れたチームはミスを多く犯しているのではなく、ミスについてより進んで話し合っているのではないか、つまり報告や原因究明を可能にする率直さの風土があるのではないか、という仮説に至ったと語っています。これは動画内で語られた仮説であり、エドモンドソン氏自身も証明とは別物だと述べています。
この内容は学術的に確立した結論として受け取ってよいですか?
この記事はTEDxトークという登壇者個人の見解・経験の紹介です。研究エビデンスを体系的に確認したい場合は、当サイトの 心理的安全性とチームパフォーマンスの研究エビデンス をご覧ください。